上位存在デスゲームRTA

ナトリウム

デスゲーム in デスゲーム

 κοντεύω να πεθάνωには三分以内にやらなければならないことがあった。それは、παιχνίδι θανάτουで勝ち抜いて今いる場所から脱出すること。さもなくば死に至ることとなる。


 κοντεύω να πεθάνωは、ごく普通のανώτερη ύπαρξηだ。それなのに、どうしてこんなことになってしまったのか。


 "παιχνίδι θανάτου"とは、ανώτερη ύπαρξηたちの間でいつからか流行り始めた遊びである。人間を一つの空間に閉じ込めて戦わせるという、人間界にあるもので例えるならばムシ〇ング……いや、蟲毒に近いものである。παιχνίδι θανάτουのルールはそんなに難しいものではない。プレイヤーたちは捕まえてきた人間を持ち寄り、用意した空間に入れる。自分の人間が最後まで生き残れば勝利だ。

 この遊びが広まるにつれ、大規模な大会が行われるようになったり、人間界で言うところの競馬のような賭け事になったりするなど、楽しみ方も多様化している。


 人間を捕ってきて閉じ込めて戦わせるというこの遊び。それをανώτερη ύπαρξηでやったらどうなるんだろう——そう考えた者がいた。その者の名前はδιοργανωτής。


 διοργανωτήςは呪った相手を自らが作り出した空間に閉じ込めることができ、しかも呪いをかけられてから一定時間が経過すると死に至るという恐ろしい能力を持っている。この力を使い、διοργανωτήςは適当に見かけた者に呪いをかけて閉じ込めた。

 そして、閉じ込められた者同士でπαιχνίδι θανάτουを行うことと、最後に勝ち残った者だけ呪いを解除すること、παιχνίδι θανάτουの開始後三分以内に決着がつかなければ全員が呪いで死ぬということを告げた。


 そんな訳で、κοντεύω να πεθάνωは何としてもπαιχνίδι θανάτουで勝たなければならなくなった。しかも、残された時間も短い。——ちなみに、ανώτερη ύπαρξη達にとっての三分は、人間にとってはその数万倍に相当する。


 戦わせる人間を探す時間は死までの三分間には含まれていない。διοργανωτήςが用意した人間界に繋がるゲートから、参加者たちは自分の命運を左右することになる人間を血眼になって探した。今回は短時間で勝負を決めなければならないから、持久力よりも攻撃力の方が重要だ。

 ある者は四角く囲まれた台の上で殴り合いをしていた人間の片方を、またある者は全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れを従える人間を捕えてきた。不幸にも強そうな人間を見つけられなかった者は、παιχνίδι θανάτουが始まる前から憔悴しきっている。

 κοντεύω να πεθάνωは武器を持っている人間を捕まえることができた。これは確か「ナイフ」というものだったか。しかも、κοντεύω να πεθάνωがこの人間を見つけた時には、周りに他の人間の死体らしきものが複数散らばっていた。とにかく時間がないκοντεύω να πεθάνωにとって、分かりやすく強い人間が見つかったのは幸運だった。この人間は時折見せつけるように武器を舐めて奇妙な鳴き声を上げているが、強ければ何の問題もない。


 διοργανωτήςの合図で、παιχνίδι θανάτουが始まった。それと同時に参加者の死へのカウントダウンも始まる。ここから先は、戦わなければ生き残れない。ただし、戦うのは人間である。

 ところで、デスゲームを主題とする人間界で有名な某ゲームでは、熊の形をしたマスコットが参加者たちを殺し合いに誘導する。だが、παιχνίδι θανάτουではそのようなものは存在しない。そのため、必ずしもすぐに殺し合いに発展するわけではない。一般的なπαιχνίδι θανάτουでは時間制限がないため、序盤の展開が遅くても問題はない。持久戦になり衰弱したものから脱落していくか、急に訳の分からない場所に閉じ込められたことに耐えきれなくなった人間が発狂して暴れ始めるのがよくあるパターンだ。

 だが、今回はそんな悠長なことは言っていられない。動機がなくとも他の人間を襲うぐらいで丁度良い。単純な破壊力で言えばバッファローの群れを従える者は脅威だったが、自分から他の人間を襲う動機がないというのが今回の環境とは相性が悪かった。その点、κοντεύω να πεθάνωが見つけてきたナイフ使いの人間は期待が持てる。何かあったかは分からないが、複数の人間をバラバラにしていた。相手に深い恨みがあったか快楽殺人鬼かは分からないが、後者であれば今回の勝利は約束されたようなものだ。

 一度παιχνίδι θανάτουが始まってしまえば、人間に直接干渉することはできない。ただ見守るのみだ。

 どうやらナイフ使いは快楽殺人鬼だったようで、他の人間に出会えばすぐに襲い掛かった。παιχνίδι θανάτουにおける快楽殺人鬼は誰もが認めるTier1だ。ただし、滅多に見つけることはできない。そんなものがたくさんいたら人間界は大変なことになっているだろう。

 物量の観点で脅威だったバッファローを従える者も、常に群れを率いているわけではない為、その拠点を離れていればただの人だ。

 あっという間に快楽殺人鬼は他の人間を全滅させてしまった。——まぁ、人間たちにとっては数か月なのだが。


 快楽殺人鬼の勝利が確定した瞬間、他の参加者たちは青ざめた。彼らは間もなく命を落とすだろう。

 κοντεύω να πεθάνωは生き残った安堵と極度の緊張からの解放でしばらく立ち尽くしていた。διοργανωτήςがこの閉鎖空間に入ってきて、約束通り解呪するために歩み寄ってきた。滅多にお目にかかれない最強格の人間を見ることができて、διοργανωτήςもどこか満足げだ。


この空間全体がπαιχνίδι θανάτου終了後の余韻に満ちていた。

——それ故に、外の異変に気づけた者はいなかった。


外から近づいてくる轟音。

それに気づいた時には手遅れで、中にいた者はδιοργανωτήςが作り出したこの空間諸共に塵芥と成り果てた。


全てを破壊しながら突き進むβουβάλιの群れが農場から脱走したというニュースが流れたのは翌日のことだった。

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