第6話 闇のカードなのでラスボス戦で頼りにはされないはずだった(過去形)
時が、迫っている。【
それを止めるべく闇の中を四人が駆け抜ける。
邪悪に輝く三対の龍眼。
『集え! 集え! 逆賊に死を与えよ! 愚者どもに死を与えよ!』
『来たる、群れる、熟れる、捨てる。滅びを、褒美を、咆哮を!』
『ウ、ヴゥウ……! 再ビ死ノ苦痛、不快ノ元凶……行カセハシナイ……!』
《死零龍 ズィークントロ》、《死虜龍 レギオー》に加え倒したはずの《死餓龍 トウテツ》が復活し、皆の行先を合計三体の【
ここで戦わなければならない、と指揮盤を構えかけ――。
「俺に任せろ! 【
「アンタだけにいいとこは取らせないよー! 一番のバズりは私のものなんだから! 《大地の守護神像 ガイラナーシス》、やっつけちゃうよ!」
「ここは僕らに任せて早く先に行くんだ! 出てくれ《緋氷雹病豹 ロロロス》!」
「皆……!」
【
『王よ、急ぎましょう!』
「ああ!」
《光輝士団長 ヘブンス》の声が背中を押す。
目印がないからまっすぐ進めているのかもあやふやになりそうな世界、これまで戦ってきた【闇】のどれよりも邪悪な気配を目指して駆け抜けた先にいたのは――異形。
下半身は人間と同じ形ではなく、映像フィルムの集合体。煮溶けたような無数の腕。指先は万年筆のように尖り、闇が意味不明の記号と文字を描く。嫌悪感を抱く笑みで固定された口。
これが【
『侵入者を検知。絶望遊戯、途中保存……失敗。再構成:ゲームマスターを中断。これより定められた時の輪より逃れた異分子、および汚染された駒の排除を開始する』
『何が定められた、だ。全部お前の勝手だったんだろうが……!』
《
「だからこそ終わらせるんだ――ここで! 俺たちの力で!」
指揮盤を構える。
【闇】との最後の戦いが始まろうとしていた。
***
全ての元凶とのバトルがついに始まった。……始まってしまった。相手の先攻からスタート。どう盤面を仕上げてくるか、だが。
『《無の極点》発動。この五つを我の手に』
《無謀:オンリーワード》
《無惨:ホリブルサイト》
《無知:オールイヤー》
《無力:オーバーヘッド》
《無情:ハートブレイク》
ダッッッッッサ!!!! ネーミングセンスがなんか……ダサい! 一枚から五枚もってくるの狡すぎるんだけどダサさの方が勝つ!
英語部分をつける必要あったかそのカード? お前の名前アルファベットと記号なんだしやって来たこととか考えるとプログラミングっぽくした方が……いや、アニメ見てる子供が何のことかさっぱりになるからやめたんだろうか。
『第一の無――《無謀:オンリーワード》発動。このカードは発動後モンスターとして戦線に置く。このカードが存在する限り、お前は自身のターンに一枚のみカードを発動することができるようになる』
あっダサいくせに効果がアホみたいにつよ――、
「無謀だなんて言われる覚えはないな! 相手ターンに手札を一枚デッキに戻して《閃光弾》を発動、そのモンスターを破壊する!」
『……ほう』
――このバトル、手札誘発にMVPを授けるのが決定したなぁ。高速化するカードゲーム展開的に相手ターンに処理しないと死んじゃう効果だったもん。
というか他のクソダサ四枚は使わない……というか使えない? 強い効果持たせるためにデメリットも重くしたのかぁ。カードのバランスを取ろうとする思いがあるラスボス初めて見たかもしれない。
『《HELLO IF:WORLD》を召喚しターンを終了する』
……あー、プログラミング風ネームはモンスターの方かあ。モンスターには制限かけてないのね。
そこもバランス取れ! セコイぞラスボス!
バトルは進む。
発動後モンスターカードになる、という共通部分は省いてざっくりと効果を振り返ろう。
《無惨:ホリブルサイト》――相手の手札を全て確認し、その中から一枚選びこのバトル内での使用を不可能にする。このカードがある限り自分のターンになる度に一度使用可能。
これ一番先に使われてたらヤバかったやつじゃーん。プレミさんきゅー。
《無知:オールイヤー》――相手フィールド、手札、墓地のカードが発動する効果無効。
コストの支払い部分は無効にならない、そして《死統龍 ヘルシャーロイデ》にはお前に抗えるだけの力がある、とアニメ的屁理屈で墓地にモンスターを溜められた後に自分が召喚された。ぐおお効果無効耐性持ってないのになんか持ってる感じになってるー! なんか体が重いー! でも頑張る! 次回の世界の理想の闇堕ちチャンスを得るためにも!
《無力:オーバーヘッド》――フィールドにいる相手モンスター全ての戦力を合計した数値分ライフを回復し、相手モンスターの戦力を0にする。
ここまできて回復とかセコイ! 自分のせいでモリッとライフ回復されたゴメン……と言ったら主人公は「ああ!」って《
《無情:ハートブレイク》――相手の墓地の全てのカードを除外、同じ枚数分相手のデッキを除外。
【闇】死亡のお知らせが出せる馬鹿強カード。使われる前に《光竜輝士団長 ヘブンスロード》の効果で墓地カード三枚回収してデッキからモンスターを特殊召喚、そしてこれ出された瞬間に《光竜輝道》を発動でさらに墓地のカードを手札に回収。
……と、墓地の枚数を減らしたので主人公のデッキは首の皮一枚で助かった。ただ、デッキの残りが本当に片手で数えられる分しかない。
逆境こそが主人公の逆転には必須。だから心配する必要はないんだけどもぺらぺらのデッキはちょっと不安になる。
そして――。
『無を構成する五が否定されたことにより――《無限:リインカーネイジ・ウロボロス》は降臨する!』
もっと召喚条件を他人に分かるように説明しろジャッジ呼ぶぞ、な言葉で呼び出されたのは《死零龍 ズィークントロ》、《死虜龍 レギオー》、《死餓龍 トウテツ》を全部合体させたような、首が三つあるドラゴン。
つまり――アルティメット節穴アイズクソ煽りダークネスドラゴンの完成だ!
確かに強さは見た目でわかるかもしれないが、小物成分が三倍にならない? それが最後に出すモンスターで大丈夫なのラスボス?
『これを以て証明してやろう、お前らの悪あがきという虚構は全てが無駄だと!』
誰も自分がそんなことを考えていると知らないまま、ターンは回る。
「今、俺は――これまでの全てを超越する! 《
はい!? そんなカード今まで見たことも聞いたこともないんですけどぉ!?
あっ待ってなんかすんごいパワーがウワーッ!?
***
《星光竜輝士王 ヘブンスロード・ルーラー》
《
《黙死龍王 ヘルシャーロイデ・サンサーラ》
***
わあ。自分含めたみんな進化しちゃったゃ……。
『《無限:リインカーネイジ・ウロボロス》の権能によりデッキから《無駄:オールデリート》発動。お前のモンスターを全て虚空へと消す』
「無駄なのはそっちだ! 《黙死龍王 ヘルシャーロイデ・サンサーラ》の効果により、俺の仲間たちはこの場から離れることはない!」
『――何ィ!?』
目に見えて動揺している。フフフ怖いか? これがラスボスのつよつよな効果ってもんよ。……違う違う、今の自分は主人公側。
『だがッ! 《無限:リインカーネイジ・ウロボロス》の戦力は無限! これを超えることはいかなるカードでも不可能!』
「《星光竜輝士王 ヘブンスロード・ルーラー》は世界に【光】を与え、《
『そして
『お前が弄んできた全ての悲劇を今ここで断ち切る!』
や、やけくそ戦力だー!?
……あ、え、えっと自分もなんかかっこいいこと言っとくべきだよね!?
『貴様の存在した痕跡、一片すら残さぬ! 闇へと堕ちよ!』
謎翻訳てめえ! ラスボスを闇堕ちさせたいワケじゃないんだがアァン!?
「これで、終わりだ――!」
《無限:リインカーネイジ・ウロボロス》くんの三つの首を三体のモンスターでズタズタにして、爆発!
あれ、自分の戦力について触れられなかったけど? 無限相手に攻撃しても無事ってことは……自分……戦力は無限超えてるってコト!? 【
『馬鹿な――こんな筈では――!』
そしてラスボスもついでに爆発。
……うん。
やっぱり、最後は戦力が高い方が勝つんだなあ。
それは最初に教えてもらうバトルの基本だもんね。
仕方ないね!
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