プリズニア(成長篇)

@colaa

プロローグ

俺がこんな辺鄙な職場に来たのはいつからだろうか?

友人がプリズニアの監視ステーションのオペレーターの求人を持ってきたのが始まりだった。給料がいいというだけ飛びついた仕事だったが結論で言うと最悪だ。

確かに給料はいい、人間関係も悪くない…まあ所長がいつもピリピリしているところ以外は…。でも何よりつらいのがこんな宇宙ステーションという密閉空間で住み込みで働かないといけないところだ。亜光速ドライブを使っても一番近い入植惑星までおよそ1日と半日かかる。これはまあしょうがないことなんだが、やはり開放的な惑星の空気を吸えないことはなかなか心に来るものがある。そういえば宇宙での仕事はこれが初めてだったっけ?そろそろ限界かもしれない…。

恒星がプリズニア6の影から徐々に姿を現す「宇宙の夜明け」とかの景色は最高なんだけどな~


いま俺がいる管制室は実に薄暗くて窮屈なつくりをしている。管制室とはその名の通り基本的にこのステーションの指揮統括、そしてプリズニア6の監視も行っている。

天井高は 2.5mとそこまで低くはないが縦6m、横4mで左右のサイドに俺たちオペレーターの席が 1 席ずつ、そして少し構えたところに所長の席がある。そしてその狭い空間に大量のモニターやボタンが配置されている。なにやらもともとこのステーションは戦艦を改造して作ったものでこの窮屈な管制室は戦艦の頃の戦闘ブリッジの名残なんだって。俺もよくわかんねーが。

「俺はもうそろそろ降りるぞ~」

所長の太くて低い声が右斜めから聞こえた。

所長...カルダシェフ所長はこのステーションの責任者であり中々ダンディーな顔立ちをしている。俺も年を取ったらあんな男になってみたいものだ。そんなことを思っていると所長はそう言うと最終の計器チェックを行った。ピコピコと電子音が鳴り響く。

「所長、今日は非番なんでしたっけ?」

とこの管制室のもう一人のオペレーターであるマークがモニターからは視線を離さずわざとらしく言った。マークは俺の同僚で機械いじりが好きそうな雰囲気を醸し出している。年は俺の方が上だが勤務歴はマークの方が上だ。赴任当初はいろいろと教えてもらい今でも感謝している。しかし今の発言には動揺を隠せなかった。なんでそんな地雷を踏みに行くようなことを言うんだよ...。

しかし所長は表情を変えずに「ああそうだ」と一言だけ言うとそれと同時に所長は地面を蹴り、装備についてあるスラスターを噴射し、所長の頭上にある通路から去っていった。このステーション、というかどこのステーションも同じなのだが迷宮と言っても差支えがないほど複雑な構造をしている。俺もここに来た頃はよく迷子になったものだ。

それを見て俺たちは「お疲れ様です」とだけ添えて、所長が去っていったのを感じ取った後そそくさと監視業務に戻った。

「遂にこの日が来たんだな…」

と少し間をおいてマークは口を開いた。マークもやはり気にしていたのか…さっきマークが所長に非番かと尋ねたときは無神経な奴だと思ったが、今考えると所長の本音を探るためのさりげない一言だったんだなと思った。

「この時に合わせて今日に非番を入れるなんて…どれだけ会いたくないんだよ………まあ…そりゃそうだよな。あんなことがあってまだ情が残っている方が…おかしいよな…」

と俺は視線を下に向けながらそうつぶやいた…

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