第24話 観雫の嫉妬
三人で玄関からリビングに向かうと、その直後に結深が言った。
「私今からお料理するから、お兄ちゃんは私についてきて」
「俺は……?観雫はどうするんだ?」
「リビングで待っててもらうよ、お兄ちゃんと二人にしてイチャイチャされたくないからね」
どうやら、本当に俺と関わる女の子全てのことを自分の恋敵だと考えているようだ。
「俺と観雫はそんな関係じゃないから、そんな心配はしなくても────」
「私は別にいいよ、リビングで待っててあげても」
俺がその結深の考えを否定しようとした時に、観雫がそう言った。
ここはその話よりも前に結深の根底の考え方を変えるべき────かと思ったが、観雫は今ここで結深と言い合いになることは避けたかったんだろうか。
「じゃあ、お兄ちゃんもそれでいいよね?」
……どちらにしても、この状況で俺が結深の提案を否定すれば俺が何か理由があって観雫と二人で居たいみたいになってしまうから、この場は結深の提案を受け入れるしかなさそうだ。
「わかった、それでいい」
リビングの椅子に座った観雫を横目に、俺と結深は二人でキッチンへと向かった。
結深は冷蔵庫から食材を取り出しながら口を開く。
「お兄ちゃん、私今結構怒ってるんだよ?本当なら今すぐにでもお兄ちゃんのことを押し倒したいぐらい」
「……嘘をついたのは悪かった、謝る」
そう言って結深に頭を下げた俺に対して、結深は言った。
「私は別に頭を下げられても何も嬉しくないよ……私がお兄ちゃんにしてもらったら嬉しいのは、お兄ちゃんに触れてもらえること、お兄ちゃんに女として求められること……だから、もし私に謝る気持ちがあるんだったら……わかるよね?」
「……わかった」
俺は頭を上げると、結深に近づいた。
結深はその俺の突然の行動に、さっきまでの暗い表情から頬を赤く染めた表情になっていた────そして、俺はそんな結深の頭を撫でる。
「っ!ちょ、ちょっとお兄ちゃん!それ女として求めてるんじゃなくてまた妹扱いしてるだけじゃん!」
「俺が触れればいいんだろ?」
「違うの!触れるっていうのはそういうことじゃなくて、もっと────」
ここまで持ってくることができれば兄である俺のペースだ。
それから俺は色々と反論しようとする結深の頭を撫で続けて、どうにか結深のことを落ち着けることに成功した。
そして俺が結深の頭から手を離した時には────
「お、お兄ちゃんに、あんなにいっぱい頭撫でてもらっちゃった……」
と言いながら、口元を緩めて嬉しそうにしており、それからは特に怒りの雰囲気を出すことなくむしろ楽しそうに料理をし始めた。
一時的なものだとしても、妹の結深の扱いには兄として十分慣れている……だが、俺の妹であろうとしない側面の結深のことはまだ完全には掴めていないから、しっかりと様子を見ていかないとな。
◇観雫side◇
観雫の座っているリビングの椅子から見えるキッチンで、一入が結深の頭を撫でているのを観雫は見ていた。
「傍から見たら、めっちゃ仲の良いカップル……ううん、頭撫でるぐらいだったら兄妹でもする、のかな……でも、私はされたことない」
一入は、結深とは兄妹で居たいという割には、結深の頭を撫でたりしてイチャイチャしている……だが、友達である自分に対してはそんなことをしてこない。
妹と友達なら、妹の方が身近な存在なのは仕方ないと観雫は考えているものの、そのことがどこか引っ掛かる。
「……私、また嫉妬してるんだ」
本当なら、自分も一入に頭を撫でられたり、手を繋いだり、抱きしめたり────その先もしたい。
だが、今のままでいる以上、きっとそのしたいことは何一つできない。
「結深ちゃんが妹っていうことで一入とあれだけ距離を縮めてるんだったら、私も……友達っていうポジションを最大限使って、一入との距離を縮める……」
一入が結深の頭を撫でている光景を見て嫉妬心を燃やしながら、観雫は一人静かに────だが、今まで以上に強くそう決意した。
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