第22話 義妹は観雫と出会う

 三限目の休み時間となったので、俺と観雫は教室前の廊下で結深のことを待ち────数十秒も待たない間に、結深が嬉しそうな声を上げながら俺たちの前に姿を現した。


「お兄ちゃん!廊下前で待ってくれてたの!?」

「あぁ、そうだ」

「嬉しい〜!」


 結深は楽しそうな表情で俺たちの近くまで歩いて来た。

 そして、俺たちの近くまで歩いてきた直後はまだ楽しそうな表情のままだったが、それまで俺しか眼中の無かった結深の目に俺の隣に居る観雫が映り、結深はその表情を曇らせて言った。


「……誰?その女の子」


 とりあえず俺がしないといけないことは、どんな理由であったとしても結深に嘘を吐いたことだ。


「結深、悪い……前に女の子と関わってないって言ったのは、嘘なんだ」

「……え?」


 結深は驚いた表情をしていたが、その結深に対して観雫が話しかける。


「初めまして、結深ちゃん……私、一入の友達の観雫香織って言うの、よろしくね」

「お兄ちゃんに、女の子の、友達……」


 結深は観雫のことを見て少し沈黙した後、俺の方を見て暗い目をしながら聞いてきた。


「いつから関わってたの?」


 ここまで来て嘘を吐く理由はもう全く無いため、俺は正直に答える。


「……俺が高校一年生の二学期からだ」

「隠してたのは、やましいことがあるから?」

「そ、それは違う!やましいことなんて何も無い、隠してたのは……結深のことを刺激したく無いと思ったからだ」

「……刺激?」

「結深は、もし俺が女の子と関わってたら俺にもっとアタックするとか行ってただろ?いつも言ってるが、俺としてはそんなことは避けたいことなんだ……だから嘘を吐いた」


 俺が全てを正直に話すと、結深は暗い声音で観雫に話しかけた。


「……観雫さんは、お兄ちゃんに恋愛感情とか抱いてない?」

「ゆ、結深!観雫がそんな感情抱いてるわけ────」


 その答えのわかりきった質問に対して俺が口を挟もうとするも、結深は俺に暗い目を向けて言った。


「お兄ちゃんは静かにしてて、今私は観雫さんに聞いてるんだから……それに、こんな重要なことを私に隠してたこと、怒ってるんだからね?」


 何か反論したい気持ちもあったが、嘘を吐いていたのは事実だし、何よりこの質問に関しては俺がわざわざ口を挟まなくても大丈夫だと判断したため、俺は特に何も言わないことにした。

 そして、結深が改めて観雫に視線を向けると、観雫は言った。


「抱いてないよ、やましいことも何もしてないから安心して」


 観雫がそう言うと、結深は観雫のことを見たまま俺のことを抱きしめた。

 思わず声を上げたくなったが、今はそういう空気ではないため俺がそれを堪えていると、結深が観雫に対して冷淡に言い放った。


「お兄ちゃんは私のお兄ちゃんだから、何もしないでくれる?」

「……うん、何もしないよ」


 観雫が真面目な表情でそう言うと、結深は俺のことを抱きしめるのをやめて言った。


「学校の、それも廊下だとこれ以上深い話はできないから、家に帰ってからお兄ちゃんには色々と聞くことにするよ……今日はお友達と遊びに行ったりせず、真っ直ぐ家に帰って来てね」

「あ……あぁ」


 俺に鋭い目を向けてそう言うと、結深は俺たちの前を去って行った。

 その場に残された俺と観雫は、今後のことについて話し合う。


「……まず、間違いなく今日俺は家に帰ったら結深に色々と問い詰められるよな」

「うん、話してみて思ったけど、愛の重たい雰囲気の子で時々怖い感じだね、最初は明るい雰囲気だったから、一入の恋愛関係になるとああいう感じになっちゃうだけかな?」

「そうだ、普段は明るくて優しいが、こういう話になるといきなりああいう感じになることがあるし、今回は何より俺が女の子と関わっていたという事実が発覚したから、今までに無いほど怒ってる可能性が高い……家に帰ってからどうするか、考えないとな」


 俺がそう言って考え始め────ようとした時、観雫は落ち着いた声音で言った。


「そのことだけど────私、今日一入の家泊まりに行ってもいい?」



 この作品が連載され始めてから三週間が経過しました!

 この機会に、この第22話まで読んでくださっているあなたの感想などをコメントや☆、感想レビューなどで教えていただけるととても嬉しいです!

 作者は今後も楽しくこの物語を描かせていただきたいと思いますので、読んでくださっているあなたにもこの物語をお楽しみいただけたら幸いです!

 今後もよろしくお願いします!

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