間話 紅猫による後片付け
「うわー。相変わらずえげつないっすねえ」
「どうしますか?」
「どうもこうもないっす。取り敢えずいつも通りに持ち帰るっすよ。」
「了解しました」
元うちの構成員をテキパキと運んでいく部下たちを見て、こいつらも慣れたよなーと少し感慨深くなる。それと同時に、新人研修でもっと《牡丹連合》の危険性を伝えないといけないなと思う。もう二度と今回のような事がないように。
あそこは絶対に手を出したらいけない。いわばパンドラの箱の様なものだ。
違いといえば、パンドラの箱には希望があるが、《牡丹連合》には希望がないところくらいだろう。
《牡丹連合》に手を出したら、待っているのは絶望などという言葉では表せないような恐怖だ。徹底的に、一切の容赦無く潰されるだけ。
「この人の腕はどうしますか?」
「うちの掃除屋に引き渡しとくっす。牡丹を敵に回して腕の一本や二本で済んだんだ。感謝するべきっすね。君、あの子は新入りっすか?」
「はい。最初の現場がここでよかったですね」
「そうっすね。これに耐えられない様であれば配置換えしてやってくれっす。」
「他の現場は、これより、ひどいんですか…?」
顔色を悪くしてそう尋ねてきた新入り君に、自分と話していた班長と自分は答える。
「もちろんっす」
「仁さんの現場はいつも、人が原型を留めているだけまだマシですね。今日に至っては死んでませんし。」
「《牡丹連合》は確かに殺さずに報復する事を第一としてるっすけど、別に殺さない訳じゃないっすしね」
そう。
たとえ部屋が血塗れでも、部屋にいる大の大人全員が右腕を切り落とされて失神していて、『牡丹』という単語を聞いただけでガタガタと震え泣くようになっていても、普段の現場よりマシだ。
そもそも仁さんの時は一撃で殺してくれるからグロさがあまりない。
「八重華さんとか、灰原さん、若林さんの時よりマシっすよ」
「ああ、あの時はえげつなかったですね……」
その時のことを思い出したのか遠い目をする班長。
まあ、《牡丹連合》の方で処理してくれる事の方が多いからあまり見る事はないが。
今回だって、本当はあっちで処理してくれる筈だったのに、自分が帰ってる途中で急に
『あ、潰した後の人間の処理は君たちに任せるよ。うちは要らないから、そっちで使いな。ただし、そいつらはうちに二度と関わらないようにする事。よろしくねー』
なんていう電話を八重華さんから受けたからだ。
全く、
「《牡丹連合》の人達は、急な無茶振りが多過ぎるっす」
「そうなん、ですか?」
「ああ。紅猫さん直属のうちの班はそれに対応する事が多いから、必然的にここより酷い現場も多くなるんだよ」
班長が新入り君と話しているのを
「なあ、こいつらって異能者じゃなかったっすよね?」
「え?あ、はい」
「なら、
「まあ、そのくらいなら妥当じゃないですかね」
「君たち、そいつらを持って帰ったらすぐに翠蛇のところに持って行くっす。絶対喜ぶっすよ」
「翠蛇さんって…あの翠蛇さんですか?」
「そうっすよ?《牡丹連合》に手を出して、自分の手を
後日、この班に残る事にした新入り君に聞いたところによると、この時自分が浮かべた笑みは随分と黒かったそうっす。
仕方ないっすよね。凛音さんからは小物って言われるし、仁さん達からは自分の方が七個も年上なのに頼りない弟分扱いされるっすけど、これでも自分、
「マフィアの幹部っすから」
壊れてて、当たり前っす。
※次の設定資料は、本編とも関係してるので、読むことをお勧めします。よろしくお願いします。by作者
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