第1章〜ヒロインたちが並行世界で待っているようですよ〜⑮
クリスマス・パーティの進行表をチェックしていた
「二人きりになっちゃったな……」
スマホのゲームで、主人公が語る言葉を口にすると、
「はっ? なに当たり前のこと言ってるんですか、
と、後輩で同居人の女子生徒は、わずかに口角を動かして応答する。
(おかしい……このセリフで、相手は、ほおを赤らめるはずなのに……)
予想外の
すると、呆れたような、あるいは、心外だといったようすで、
「朝だって、司さんが仕事に出ちゃったから、二人だったじゃないですか?」
「まあ、たしかに、それもそうだな……」
後輩女子の当たり前すぎる指摘に同意しつつ、
(これが、いつもの
オレの元いたセカイの彼女の言動を思い出しながら、苦笑する。
ちなみに、
その彼女の方針を尊重して、校内では、(オレの認識している)普段どおりの会話を楽しむことにしていた。
さらに、中学生の頃からお世話になっている
それは、
「でも、
「そうだな……それは、オレや
自分が元いたセカイでは、海外の大学への進学を目指すと言っていた先輩の言葉を思い出し、苦笑しながら返答すると、
「だからこそ、残りの活動を精一杯がんばりたいですね」
オレと同じくらいに……いや、オレ以上に
そんな彼女に、オレはたずねてみることにする。
「
「そうですね……具体的な活動内容でも、高校時代のことでもないですけど……やっぱり、中学のとき放送部に入部してから、くろセンパイと校内放送を始めるまでの間に起こった出来事ですかね?」
フフフ……と笑いながら、彼女が発したその内容に、オレは内心で驚きを隠せなかった。
「それは……クラスの女子から、因縁をつけられたって話しか?」
この『ルートC』のセカイでも、自分がいた元のセカイと同じ事象が発生していたのか確かめるように、慎重に質問すると、
「あんまり思い出したくないことでもあるんですけどね……」
こちらの問いかけに対して、肯定するようにうなずく彼女のようすから、オレは、自分の認識しているとおりの出来事が、このセカイの
オレや
オレたちの所属する放送部に、彼女への嫌がらせに関する投書があって、その内容が明らかになると、
(
身に覚えがない間に、クラス委員のパートナーから好意を寄せられるという経験も悪くはないが、やはり、自分自身の経験が共有されているという実感は、心の安らぎにつながる。
「でも、そのあと、あの時、ワタシの所に駆けつけてくれたセンパイと一緒に住むことになるとは思いませんでしたけどね……ね、お兄ちゃん」
いたずらっぽい笑みを浮かべて、校内では禁句にしているハズの呼び方で、後輩女子は呼びかけてくる。
下級生にして、このセカイでは同居人でもある
(この調子なら、
と、楽観的に考えていた。
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