第1章〜ヒロインたちが並行世界で待っているようですよ〜⑭
妹(的存在)のいる生活の理想と現実のギャップに、大いに無念さを感じながらも、しばらく、ようすを探ってみようと考えたオレは、
今年度の生徒会、そして、放送・新聞部の三年生最後の活動となるクリスマス・パーティは、『ルートC』と名付けたこのセカイでも開催されるようで、
一方、撮影班の責任者になっている
そして、オレと
全体の進行表を確認する
「こうして、
「そうね……私も、
普段は、感傷的なことを口にしない部長が、珍しく部活動や高校生活の思い出に浸っているように語るのを聞くと、オレ自身も、この時間が貴重なものだと感じ、なんだか感慨深い気持ちが込み上げてくる。
そんなことを考えながら、
「そういえば……部長が引退する前に聞いておきたかったんですけど、あのポスターって、なんですか? たしか、中学の時の放送部の部室にも貼ってありましたよね」
Stay hungry.Stay foolish.
という一文がタイプされている。
後輩女子の質問に、こうした話しを語ることが、何よりもスキな
「あれは、『
「この雑誌の最終号の発売記念イベントで、売上金の2万ドルをユニークな使い方を発表した参加者に譲る、という企画があったらしいんだけど……その中から、ひとりの参加者が『紙幣なんて燃やしてしまおう』という提案をしたらしくて、彼に2万ドルが与えられたの。ただ、彼は提案どおりに紙幣を燃やさず、その資金を使って4年後に、コンピュータの愛好家たちが、情報やアイディアを無償で交換するためのクラブを立ち上げたのよ」
流暢に語る部長の言葉に、オレは、以前、彼女に聞かせてもらった重要なポイントを付け加える。
「そのコンピューター・クラブに参加していたのが、スティーブ・ジョブズなんですよね?」
確認するように発した一言に、
「ジョブスが、ここでコンピュータに関する知識を深めて、同じくクラブの会員だったエンジニアのスティーブ・ウォズニアックとともに創業したのが、いまの私たちの生活に欠かせないPCやスマホを開発したアップル社なの。ポスターの右側に書かれている『Stay hungry.Stay foolish』という言葉は、有名なスピーチの一例として、浅倉さんも英語の授業で聞いたことがあるんじゃないかしら? もっとも、この言葉をどう解釈して和訳するかは、プロの翻訳家の間でも意見が別れるみたいなんだけど……」
最後は、苦笑しながら語る部長の語り口に、下級生は、「はぁ〜、なるほど〜」と、感心するようにうなずいている。
上級生や教師にも、遠慮なしにモノを言うタイプの
そんな先輩と後輩の会話を聞きながらも、オレは、ポスターを眺めながら、まったく別のことを考えていた。
オレが気になったのは、アップル信者なら、誰もが知っている英文の方ではなく、ポスター左側の中央に映し出された自分たちが住む
魅入られるように雑誌タイトルの下に浮かぶ天体を見つめ続けていると、
(まるで、オレがアクセスしてる『セカイ・システム』の映像みたいだな……)
という想いが、心のどこからか湧き上がってきた。
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