第17話 時ちゃんと失われたレシピ

春の訪れと共に、「時ちゃんの、めざし道!」には新しい息吹が吹き込まれていた。時ちゃんは、祖母から受け継いだ古いレシピブックを見つめていた。その中には、世代を超えて愛されてきた多くの料理の秘密が記されているはずだった。しかし、時ちゃんが最も再現したかった、ある特別なめざしのレシピのページだけが、どこかに失われてしまっていた。


このレシピは、祖母が若い頃、地元の漁師から教わったと言われているもので、特別な調味料と焼き方によって、めざしが驚くほど美味しく変わるという。しかし、祖母は詳しい作り方を口頭でしか伝えておらず、時ちゃんはそれを記録したページを失ってしまったのだ。


失われたレシピを取り戻すため、時ちゃんは地元の漁師たちや、祖母の古い友人に話を聞きに行くことにした。その過程で、彼女は祖母が若い頃に地域でどれほど尊敬されていたか、またその料理が人々にとってどれほど特別なものだったかを知る。


ある日、祖母の友人の一人が、ふとしたことから、レシピに関する重要なヒントを思い出した。それは、特別な調味料が地元のある特定の海草から作られていたこと、そしてその海草が特定の季節にしか手に入らないことだった。


時ちゃんはその海草を探し求め、ついに手に入れることに成功した。そして、祖母の友人からのヒントと自身の記憶を頼りに、試行錯誤を重ねながらレシピを再現していった。


完成した日、時ちゃんは特別なめざしを常連客たちに提供した。一口食べた瞬間、彼らはその味に驚き、感動した。そのめざしは、ただの食材を超えた、時と記憶、そして愛が織りなす芸術作品のようだった。


失われたレシピを取り戻し、それを現代に蘇らせることができた時ちゃんは、祖母との絆を改めて感じるとともに、自分自身の料理人としてのアイデンティティをより深く理解することができた。


この日以降、「時ちゃんの、めざし道!」には新たな伝説が加わり、時ちゃんとそのめざしは、さらに多くの人々に愛されるようになった。時ちゃんは、失われたレシピを取り戻す旅が、自分自身を取り戻す旅でもあったことを知ったのだった。

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