第9話 ハタハタの実験

時ちゃんが「時ちゃんの、めざし道!」で扱うのは通常、めざしであるが、彼女の好奇心はそれにとどまらなかった。特にハタハタには以前から興味を持っており、その独特の風味と食感をどう活かせるか、常に考えていた。ハタハタはその地域では珍しく、仕入れるチャンスはほとんどなかったが、運良く市場で見つけた時、彼女は迷わず手に入れた。


ハタハタを丸干しにして、めざしのように焼く試みは、時ちゃんにとって全く新しい挑戦だった。どう焼けば最も美味しくなるのか、何度も試行錯誤を重ねた。炭火の温度、焼く時間、さらには魚を開く角度に至るまで、細部にわたってこだわり抜いた。そしてついに、彼女はハタハタを最も美味しく焼ける方法を見つけ出した。


その日、店には常連客である老紳士が訪れた。彼は時ちゃんの料理に深い理解を示し、新しい試みをいつも楽しみにしていた。時ちゃんはこの日のために、特別メニューとしてハタハタを提供することを決めた。


「今日は特別なものを用意しました。ハタハタです」と時ちゃんが静かに言うと、老紳士の目は好奇心で輝いた。彼はそれを口にすると、一瞬でその味に感動した。ハタハタの深い旨味と独特の食感、そして時ちゃんの焼き方が生み出す香ばしさが完璧に調和していた。


「これは素晴らしい。時ちゃん、あなたは本当に天才だ」と老紳士が賞賛すると、時ちゃんはほんのりと頬を染めながら、感謝の言葉を返した。このハタハタの成功は、時ちゃんにとって大きな自信となり、さらなる料理の探求への意欲を刺激した。


この日を境に、「時ちゃんの、めざし道!」では、時々特別メニューとしてハタハタが登場するようになった。時ちゃんの挑戦が新たな名物料理を生み出し、店の魅力をさらに高める結果となった。時ちゃんの料理への情熱と探究心が、常連客に新たな味わいと驚きを提供し続けているのだった。

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