第8話 秋の訪れと新たな挑戦

秋の風が「時ちゃんの、めざし道!」の小さな店を通り抜ける頃、時ちゃんは新たな挑戦に取り組んでいた。地元の秋祭りで、初めて店外でのめざし焼きを披露することになったのだ。これは、常連客である地域のお祭り委員会の提案で、時ちゃんの店の名をさらに広める絶好の機会でもあった。


初めは躊躇していた時ちゃんだが、支持してくれる常連客たちの背中を押され、このチャレンジを受け入れることに決めた。準備期間を通じて、時ちゃんはめざし焼きの技術をさらに磨き上げ、祭りの日に向けて最高の味を提供できるよう努力を重ねた。


秋祭りの日、時ちゃんは早朝から屋台を設営し、炭火でめざしを焼き始めた。独特の焼き魚の香りが辺りに広がると、興味を引かれた人々が次々と屋台に集まってきた。多くの人が時ちゃんのめざし焼きを試し、その美味しさに感動する様子を見て、時ちゃんの緊張は次第に解けていった。


祭りの中盤、ある老夫婦が時ちゃんの屋台にやってきた。二人は時ちゃんのめざし焼きを味わった後、彼女に声をかけた。「若いのに、こんなに美味しいめざしを焼けるなんて素晴らしい。昔、私たちが若い頃に食べた懐かしい味だよ」と老夫婦は感激して語った。


この言葉が時ちゃんの心に深く響いた。自分の料理が人々に懐かしい記憶や幸せな瞬間を思い出させることができると感じた時、時ちゃんは自分の仕事に対する新たな誇りを感じ始めた。


祭りが終わりに近づく頃、時ちゃんは多くの人々から感謝の言葉を受け取った。この日の経験は、時ちゃんにとって単なる挑戦を超えた意味を持っていた。彼女は自分の料理が人々の心を動かし、喜びを分かち合えることを実感したのだ。


秋祭りの後、時ちゃんは店に戻って通常の営業を再開したが、その日以来、彼女の店は以前よりもさらに多くの人で賑わうようになった。時ちゃんの新たな挑戦が、彼女自身と「時ちゃんの、めざし道!」にとって大きな転機となったのだった。

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