戦う美少女戦士【KAC20241】

かがみゆえ

戦う美少女戦士

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 美少女戦士には三分以内にやらなければならないことがあった。


 それは目の前に現れた敵を倒すということ。

 地球の平和と愛を守るために、美少女戦士は毎回三分以内に敵を倒すことになっていた。


「おほほほほっ! 早くお星さまにおなりなさぁい!!」

「いだだだだっ!? 股関節! 股関節がやばいっ!」

「あらやだっ! まだまだ元気ネェ!」

「あれっ、君って美少女戦士だよね? 魔法のステッキで敵を倒すんだよねぇっ!?」

「うんまぁ! よく喋るお敵だこと! 日本語がお上手ぅっ!」

「痛ーっ!!」


 美少女戦士は敵にプロレス技をかけていた。

 魔法を使って敵を倒すのではなく、プロレス技を使って敵に立ち向かうのだ。


「毎回言われるけどねぇ! 魔法を使えば終わるって簡単に思ってんじゃないわよ! 魔法を使うにも体力をかなり消費すんのよ! 毎回次の日には喉の痛みと筋肉痛になって大変なんだからねぇっ! だから全力で三分以内にケリつけんのよ!」

「いや、それ大声出してこの技を使ってるからじゃ……ギブギブぅっ!!」

「早くお星さまになれやァっ、ゴルァ!!」

「ひいっ、怖いィっ!?」


 戦士とは戦闘に従事する兵士だ。

 魔法を使わずに己の力のみで戦っているので美少女戦士のやり方は間違っていない。

 だが、“いや、これじゃない”と感じるのは今プロレス技を食らっている敵だけではないはずだ。



「魔法を……お願いだから魔法で戦ってーーー!! そしたらこっちは魔力で応戦するから!! ねぇっ!! マジで!! お願いしますぅ!! すぐに負けないけどこっちに見せ場をくださいィっ!! ぎゃーーー!!!」



 敵の悲鳴を聞きながら、今日も美少女戦士はプロレス技をかけるのだ。




「仕上げよ! 滅しなさぁい!!」


 瀕死の敵に、最後は魔法のステッキを振りかざしてトドメを刺す美少女戦士。

 美少女戦士が唱える魔法の言葉は秘密だ。

 悲鳴は上がらずに、敵は塵となって消えた。

 今日も美少女戦士は三分以内で敵を倒すのだった。


「ふぅ……今日も地球の平和と愛は守られたわ!」

「やったね、美少女戦士!」

「ありがとう、クマ吉」


 美少女戦士に声を掛けたのはクマのぬいぐるみマスコットだ。

 本人はラブリーなうさぎだと言い張るが、耳が丸く色は茶色いのでクマだろう。

 美少女戦士がいる時点で、喋るぬいぐるみマスコットに突っ込んではいけない。


「クマ吉じゃなくて、ラブうさだってば!」

「耳が長くなってから手直してきなさい。あんたはクマ吉で充分よ」

「酷い!」

「さっ、早く変身を解いて帰らないと」


 美少女戦士が魔法のステッキを振りかざすと、そこに美少女戦士の姿はなかった。


「あー、窮屈だったわァ」


 美少女戦士がいたところには恰幅の良い男性がいた。

 男性が首や肩ををまわすとゴキッバキッと大丈夫かと問いたくなる音が鳴った。

 そう、美少女戦士の正体は男性だったのだ。


「毎回見てるけど見慣れないなぁ……」

「いい加減慣れなさい」

「美少女戦士の正体がおっさん……」

「だまらっしゃい。あたしを美少女戦士にしたのはクマ吉でしょうが」

「だって、美少女戦士になる条件が『強いオトメ』だったんだもん……」

「合ってるじゃないの」

「正反対だよぉ……!」


 クマ吉もといラブうさは男性が美少女戦士なのを納得していないようだ。


「何でもいいわ。あたしは地球の平和と愛のために戦う。それだけよ」

「うわぁ、かっこいい……」

「今何時……って大変! もうすぐお肌のゴールデンタイムに突入しちゃうじゃないの!! クマ吉っ、寄り道しないで帰って来るのよ! 寝不足はお肌の大敵よーーーっ!!!」


 ドドド…!と音を立てて、男性は走り去って行った。





「う~ん……美少女戦士は素の方が敵を倒せるんじゃ……」


 ラブうさの独り言は誰にも聞こえない。

 今日も美少女戦士は三分以内で敵を倒し、帰路につくのだった。


- END -

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戦う美少女戦士【KAC20241】 かがみゆえ @kagamiyue

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