第47話 ルール違反

 バス停のベンチに座り、二人でじっと直樹なおき莉奈りなが現れるのを待っていた。だが、どちらも姿を見せなかった。


「俺はあの子に見つかって山荘に連れ戻されたから」

 と直樹が言うと、亮平が黙って頷いた。


 直樹は自分の左腕に繋がれた点滴のチューブを目で追いながら、あの時の状況を思い出していた。


「山荘に戻ったら、いるはずの莉奈がいなかったんだ。テント、車、山荘の中、あちこち探したけれど、どこにも見当たらなかった」

「崖下で遺体となって発見されたんだ」

「崖下?」

「獣道の途中」


 そうか。あそこは険しい箇所があるから、足を踏み外したのかもしれない。などと考えて、直樹は重要なことに気付いた。

「いつ落ちたんだ……?」


 すると、莉奈の性格をよく知る亮平が、警察から聞いた遺体状況などと照らし合わせて答えた。


「直樹と葵が出て行った後、莉奈は一人でいるのが怖くなって後を追ったんだと思う。葵が、山を下りている途中に女の悲鳴を聞いたと言っている」

「それは俺も聞いた。葵なのか莉奈なのか判別できなかったが」


 もし、あれが莉奈の悲鳴だとしたら……。



『三人以上はあの子にとってルール違反』



 莉奈はあの子に捕まってしまったのかもしれない、と直樹は思った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る