第4章

第46話 病院

 ◇ ◇ ◇


 数日後、直樹なおきは病室のベッドの上で目を覚ました。

 側には亮平りょうへいの姿だけがあった。


あおい莉奈りなは……?」

「葵は実家に帰った。莉奈は……」


 亮平が俯き加減に「亡くなった」と告げた。



 直樹と亮平が山を駆け下りた時、亮平は無事にバス通りへと抜けられたのだが、やはりどこに行ってもスマホは圏外で救助要請ができなかったという。

 やむを得ず最寄りの商店まで行き、助けを求めたところ、高齢の女性が出てきて渋い顔をした。


「あの山荘に入ったのか? あそこに入ったら、盆が終わるまで出られん。警察や消防を呼んだところで山荘には辿り着けん。山の中を彷徨さまよって終わりだ」


「そんなバカな。僕の友人は一度バス通りに出た後、山荘に戻って来ましたよ」


「それは山荘の所有者じゃないのか? 所有者は山荘に入ることが許されておる。だが、部外者は無理だ。一度出たら二度と入れん。盆が終わるまでな」


 そうは言われたが、スマホが使えないので代わりに警察に救助を要請してほしいと頼み込み、亮平は再び山荘へと戻ることにした。そしてその途中、歩道をふらふらと歩いている葵と合流したのだった。

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