第21話 この山荘には女の子がいる

 ◇ ◇ ◇


 三人は身を寄せ合うようにテント前の折り畳み椅子に腰をおろした。

 バーベキューコンロの上には、炭状になった肉や野菜が残っている。

 あおいは気を紛らわすためか、椅子に座りながら地面に転がる空き缶を拾って、ゴミ袋に詰めていた。


「こんなことに巻き込んで、すまない」


 直樹なおきが呟くようにそう言うと、亮平りょうへいが鼻で笑った。


「直樹が謝ることじゃないだろ? 直樹が怪奇現象を起こしているわけじゃないんだ」


 あおいがこくんと頷いた。

 だが、直樹は二人に後ろめたさを感じていた。ここが「呪いの山荘」と呼ばれていることを知っていながら、誘ったのだ。


 言えば、皆が来たかどうか分からなかったし、直樹自身、呪いというものに半信半疑だったのだ。

 前所有者の話はこうだ。



「この山荘には、女の子がいる。

 この山一帯が、その子の遊び場。

 皆が去ろうとすると、その子は必死に引き留める」



 まもなくして、地図上では行き止まりの山上から軽自動車が現れた。運転席では健人けんとが血相を変えている。

 直樹は、やはりか、と思いながら、何も出来ずに見ていた。


 車は山荘の前を通過し、再びバス通りへと下りていく。

 その車体を、葵は寂しそうな目で見ていた。

 大学時代から五年近く付き合っている男が、自分を置いて、ここから逃げようともがいているのだ。

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