第11話 女の子が現れる
「なんだ、今のは?」
「……分からない」
そう話している合間にも向かいからは、じゃりじゃり、という足音が聞こえてくる。
直樹の額にはじっとりと脂汗が滲んでいる。
二人で身を寄せ合うようにして、辺りをきょろきょろと窺った次の瞬間、
「……っ!」
直樹と莉奈は恐怖に顔を引きつらせた。
先の曲がり角から、小さな女の子が姿を現したからだ。
五、六歳くらいの女の子が、たった一人で歩いているのだ。
道に迷って泣いているわけでもない。
肩よりも長い髪をサラサラとなびかせ、人形のように美しい顔に笑みを浮かべているのだ。
あの子から見ればここは上り坂なのだが、まるでスキップするかのように軽い足取りでこちらに向かって歩いてくる。白いワンピースをふわふわと揺らしながら。
『フフフ』
何が楽しいのか、あの子が笑った。
時刻は深夜十二時を過ぎている。
先のバス通りは日中でさえ車の行き来がほとんどないのだから、この時間に人が歩くことは考えづらい。ましてや女の子だ。明らかに普通の状況でない。
それに、ここは私道。この上には直樹の山荘以外に民家はない。近くにキャンプ場もない。小さな女の子がここに迷い込む背景はどこにもないのだ。
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