第15話 進撃の小人②

 皆さま、こんにちは。今回は『進撃の小人こびと』の第二弾。『二人の関係性についてのお話』の続きを書かせていただこうと思います。

 サブタイトルを付けるならば『キヨっちゃんvs息子ちゃん、仁義なきお風呂場での戦い』とでもしておきましょうか。

 そうです、今回も息子ちゃんが下克上をします。ですが、どうか温かい目で見てやってください。


 あれは、息子ちゃんが3歳を迎えて、すぐの頃の出来事でした。

 毎日仕掛けられる夫のつまらないイタズラで、精神的に鍛えられた……のかどうかは分かりませんが、その頃には、夫のイタズラに対して、全く動じなくなった息子ちゃん。

 夫と二人っきりになっても、泣かなくなったことをきっかけに、私は『息子ちゃんのお風呂係』を夫に引き継いでもらいました。


 そうして、何事もなく数ヶ月が過ぎたある日のこと。


「さあ、息子ちゃん! お風呂に入るぞぉ〜、ついてまいれー!」


 その日も、夫はいつものように、時代劇風な物言いで息子ちゃんをお風呂に誘うと、一緒に脱衣所へと入っていきました。


 しばらくすると、お風呂場から『それでは只今よりシャンプーを始めます! 礼!』という、学校の朝礼のような号令が聞こえてきます。


 我が家ではお馴染みの、何の変哲もない親子のやり取り。

 そのまま何事もなくお風呂を済ませるものだと思っていた私の耳に、何やら言い争うような声が聞こえてきました。そして……


「ダメだ! 外で済ませてこい!!」


 先ほどまでの、浮かれた声とはまるで違う夫の怒鳴り声が、私の耳朶じだを打ちました。


 その、ただ事ではない気配に驚いて、私が脱衣所へ駆けつけるのと同時に、とても険しい表情をした息子ちゃんが、お風呂場から飛び出してきました。


「息子ちゃん!? ど、どうしたの!? 一体、何があったの?」


 私の呼びかけにも答えず、むすっとした顔の息子ちゃんは、びしょ濡れのまま脱衣所から飛び出していきます。


 えーーーッ!? ホンマに何があったんやァァーッ!?


 急いで息子ちゃんの後を追いかけた私が見たものは……


 小便小僧さながらに、リビングの隅に置いてあった夫のリュック目掛けて、仁王立ちで放尿する息子ちゃんの姿でした。(しかも息子ちゃん、この時ほくそ笑んでおりました)


 なぁっ!? 何やってんだぁーーーッ!!


 息子ちゃんにはとても甘い私ですが、さすがに、これは許すことができません。

 私が叱りつけようとした、まさにその時……


「ま、待ってくれ。これは俺が悪かったから、叱らないでやってくれ!」


 まさかの、被害者(夫)からのストップが入りました。

 これには、何か訳がありそうです……。


 事の経緯を聞いたところ、シャンプーをしようと息子ちゃんの頭にお湯をかけた直後、息子ちゃんが『おしっこ〜』と言い出してしまい、つい、声を荒げてしまった、とのことでした。


 あれ!? お風呂の前にはおトイレに行くよう、きちんと躾けてあったはずのに、どうしてそんなことに?


 疑問に思った私が問いかけると、夫が息子ちゃんのお風呂担当になって以来、『風呂場の中で(用を足)していいから早くこい!』と言って、ずっと風呂場で用を足させていたそうなのです。(ぎゃー!)


 しかし、さすがに夫も『このままではまずい』と思い始めたらしく、私にバレないよう、ここ数日はお風呂前に声掛けをしていたそう。

 ですが、一度付いてしまった癖が急に直るわけもなく、結果、今回のような事態になってしまった、とのことでした。


 息子ちゃんにしたら、『いいから、ここでしろ!』と言われていたのに、突然『ここでは、するな!』と、手のひら返しをされた訳です。


 まあ、気持ちは分かるけど、仕返しの仕方が過激だなぁ。いったい誰に似たのやら……って、キヨっちゃんにそっくりやんけーーーッ!!

 DNA、恐るべし……。


 あっ、もちろん息子ちゃんの粗相の後始末は、キヨっちゃんが率先してやってくれましたよ。

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