第33話 レベル測定
「……ここか」
冒険者ギルドに辿り着いた俺は、さっそく扉を開けて中に入っていく。
すると、その直後。
ギルド内から一斉に、幾つもの視線が飛んできた。
「おい、誰だアイツ……?」
「さあ、見覚えはないな」
「見た目的に冒険者歴は長くなさそうだが……」
「ここがどんなギルドか理解してるのか?」
……ふむ。
中にいる冒険者たちが、こちらを見ながら小声でボソボソと話し合っている。
俺には聞こえないよう心掛けているみたいだが……残念ながら筒抜けだ。
周囲を見渡してみると、そのほとんどが30歳は超えているであろう冒険者ばかりだった。一番低くても20代の半ばを超えている。
話している内容と併せて考えれば、おおよその状況を理解するのは容易だった。
ここは迷宮都市。
Aランク――500レベル超えが当たり前な、まさに冒険者たちの最前線。
その高みに至るまで、通常なら冒険者を始めてから10年以上はかかるはずだ。
そんな中、俺のような20歳にも満たない若者がいることに、違和感を覚えるのも無理はないだろう。
もっとも、俺からすればそんなことどうでもいい。
ひとまずこの場では、冒険者登録だけを済ませたい。
俺は視線を無視し、受付まで歩を進めて。
受付嬢が、笑みを浮かべて対応してくれる。
「いらっしゃいませ。本日はどういったご用件でしょうか?」
「冒険者登録がしたい」
もともと持っていた冒険者カードは、二年前のあの日、荷物袋をアルトに渡した時に紛失した(カードも荷物袋の中に入れていた)。
ちょうどいいタイミングだし、ここは一から作り直した方がいいだろう。
そう思っての発言だったのだが、受付嬢は困ったように眉をひそめた。
「冒険者登録、ですか……お言葉ですが、本ギルドで取り扱っている依頼は上級者向けのものが多く、未経験の方が達成できるようなものは置かれておらず……」
……なるほど。
要するに今から冒険者登録をするような初心者は求めていない、というわけか。
とはいえ、ここで冒険者カードを紛失した事情を話すのも面倒だ。
何か理由をつけて説得する方がまだ楽だろう。
「いや、これまでも魔物との戦闘や、ダンジョン攻略自体はしたことがある。実力的にも、ここで活動できる最低限はあると思う」
「そ、そうですか……でしたら、分かりました」
戸惑いながらも、受付嬢は了承してくれる。
何とかなりそうだと思っていると、彼女はテーブルの下から何かを取り出した。
これは……マジックアイテムか?
「それでは登録時の参考にさせてもらうため、こちらのマジックアイテム――【能力測定機】に手を置いてください」
それは初めて聞く単語だった。
「能力測定機?」
「はい。見るのは初めてですか? こちらのギルドでのみ特例で、新規登録者の能力を調べることになっているんです」
「……なるほど」
昔、トレードヘブンで冒険者登録をした時は、ただ自分の名前を伝えただけで登録が終了したんだが……ここでは高難易度のクエストを取り扱う関係上、より詳細なデータを参考にしたいということだろう。
しかしこれは少々面倒なことになった。
俺は、現在の自分のステータスを確認する。
――――――――――――――
シン 17歳 レベル:44
称号:なし
HP:440/440 MP:130/130
攻撃力:34000
防御力:30780
知 力:10500
敏捷性:30800
幸 運:10500
SP:0
ユニークスキル:【無限再生】
エクストラスキル:【自傷の契約】・【痛縛の強制】・【毒質反転】・【飢餓の忘心】
通常スキル:【毒耐性】・【睡眠強化】・【武具生成】
――――――――――――――
レベル500はおろか、10000すら大きく上回るパラメータたち。
いったいどんな結果が出るか想像もつかない。
できれば俺の実力については、周囲に広めたくなかったんだが……(下手に注目されたら、調査の邪魔になりそうだから)
……まあ、絶対というわけではないか。
「分かった、ここに手を置けばいいんだな?」
俺が測定器に手を伸ばそうとすると、突然周囲が慌ただしくなる。
「おい、今から登録するみたいだぞ」
「あれだけ言うってことは、相当実力に自信があるのか?」
「どんなもんか見せてもらおうぜ」
周囲の視線が一斉に集まる。
できれば見せたくはないが……
新規登録者の実力を確かめるのはこのギルドの通例なのか、受付嬢も特に止めようとはしない。
……仕方ない。
俺は一つため息を吐いた後、測定器に手を置いた。
「これでいいのか?」
「はい。そうすると自動的に、この機器が対象者の
「……レベル?」
その言葉に、違和感を覚えた直後。
突如として、マジックアイテムが眩く光る。
「っ!? なんだ、この明るさは……!」
「こんなの、これまで見たことないぞ!」
「いったいどれだけの能力を持ってるんだ!?」
周囲のざわめきが、一層強くなる。
しかし数秒後、光が収まった時――マジックアイテムの上には『レベル:44』という数字だけが浮かんでいるのだった。
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