第二部 魂の共鳴
第32話 迷宮都市【トレジャーホロウ】
――あの日から、約20日が経過した。
目的地である迷宮都市【トレジャーホロウ】に辿り着いたのは、ほんの数日前。
そしてこの数日間は、情報を集めるため町の探索に注力していた。
そこでまず、思ったことが一つ。
「やっぱりトレードヘブンに比べたら、冒険者の数がかなり多いな」
それもただの冒険者ではない。
多くが高レアリティの装備に身を包んだ上級冒険者であり、Aランクに達している者も決して少なくない。
道を歩く一人一人が、アルトたちを上回る実力を有しているのだ。
さすがは冒険者たちにとって憧れの迷宮都市と言えるだろう。
「あと注目すべきは……やっぱり大迷宮か」
――大迷宮【エンドレス・ホロウ】。
それは、この町の中心に存在する世界最大規模のダンジョンだ。
現在の最高到達地点は65階層となっており、そのフロアを探索するだけでも最低1000レベル――すなわち、Sランク越えの実力が必要だと言われている。
フロアボスの攻略を試みるとなれば、少なくともその数倍は必須だろう。
このダンジョンがあるからこそ、この町には数多の優秀な冒険者が集い、迷宮都市と呼ばれるようになった――というわけだ。
ちなみに【エンドレス・ホロウ】から漏れ出した魔力によって、周辺地域に大小さまざまなダンジョンが出現することも多い。
それらの比較的低ランクダンジョンの攻略を生業としている者も多いが……彼らの最終目標が大迷宮の完全踏破であることは間違いないだろう。
「そういえばアルトがよく、Aランクに到達した後はこの町で名をあげてやるって意気込んでたっけ……」
そう語るアルトの目はキラキラと輝いており、かつての無垢だった俺はそんな彼に憧れを抱いていた。
……もっとも、アイツの想像する未来のパーティーの中に、俺は初めからいなかったんだろうけど。
まあ、そのあたりについてはいい。
問題はこれからのことについてだ。
俺としても大迷宮に興味がないわけじゃないが、下手に攻略して注目されるのは面倒だ。
そのため、まずは復讐対象でもあるブラスフェミー公爵家について調べていた。
そしてこの数日間の調査で判明したことが一つある。
現在、ブラスフェミー家当主は国王陛下からの呼び出しを受けて王都に向かったため、このトレジャーホロウにはいないとのことだ。
「……直接顔を合わせて話を聞くのは、また今度になりそうだな」
調査自体は今後も続けるが、決定的な情報を集めることはできないかもしれない。
そしてこの辺りで、もう一つ別の問題が浮上した。
それが――
「路銀が尽きた」
以前、盗賊から奪った金は、復讐用のマジックアイテム購入でほとんど使い切ってしまった。
ここ数日は残った分でやりくりしていたのだが、この都市自体、物価が高いこともありそろそろ余裕がなくなっていた。
正直【黒きアビス】での経験があるため、十日程度飲まず食わずくらいなら特に問題はないが……効率的に調査を進めるためにも、金はあった方がいい。
そう考えた俺は、ひとまず短期的な目標を切り替えることにした。
直近の目標は路銀稼ぎ。
伝手のない俺が取れる方法は、実質一つしかない。
――つまり、周囲の迷宮を攻略し、獲得した資源を売却するというもの。
「……決まりだな。そのためにも、まずは冒険者登録か」
こうして俺は、この町の冒険者ギルドに向かうのだった。
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第二部開幕です!
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