外れスキル【無限再生】が覚醒して世界最強になった ~最強の力を手にした俺は、敵対するその全てを蹂躙する~
八又ナガト
第一部 外れスキル【無限再生】の覚醒
第1話 最高のパーティー【黎明の守護者】
新規ダンジョン【黒きアビス】の最深部。
そこには現在、注意深く周囲を警戒しながら探索する5人の冒険者パーティーがいた。
名を【
僕――シンが所属している、最高のパーティーだ。
「シン。そろそろボス部屋だが、休息はいるか?」
「いえ、大丈夫です、アルトさん!」
先頭を歩く、整った顔立ちに少し長めの金髪が特徴的な青年――パーティーリーダーであるアルトさんからの問いに、僕は力強くそう返した。
この中で最も実力の劣る僕は、
魔物との戦いを免除されている身分で、弱音など零すわけにはいかない。
「そうか? それならいいが、本当に疲れた時はすぐに言えよ。お前は大切な仲間なんだから」
「はい!」
僕の意気込みを理解してくれたのか、アルトさんは嫌な顔一つ見せることなく、優しく僕を気遣ってくれる。
そんなアルトさんに感謝しつつも、このまま足手まといで居続けるわけにはいかないなと思った。
「……早く戦力になれるよう、強くなりたいな」
そう呟きながら、僕は自分が【
あれは、ほんの一年前のこと。
僕が暮らしていた故郷の村に、ある強力な魔物が襲いかかってきた。
その魔物はBランクに指定される竜種で、田舎の村が保有する戦力では抵抗することすらできなかった。
結果として、村人は僕を除いて全滅。
家族も、友人も、恩人も、その全てを一瞬で失った。
――だけど、それと同時に得たものもあった。
それが【
僕が気絶から目を覚ました時、そこには竜の死体が転がっており、その前には武器を構えるアルトさんたちがいた。
そう、僕にとって仇である魔物を、アルトさんたちが倒してくれたのだ。
その後、唯一の生き残りである僕を見つけたアルトさんは言った。
『俺たちの仲間にならないか』――と。
寄る辺を失った僕には、そう告げるアルトさんが輝いて見え――気が付いた時にはその手を取っていた。
その判断が間違いではなかったと、今では自信を持って断言できる。
だからこそ、より強く思うのだ。
アルトさんたちに恩を返したい。
早く戦力になれるよう、強くなりたいな――と。
その呟きが聞こえたのだろうか。
アルトさん以外の3人が、タイミングを合わせたように僕へと近づいてきた。
「なんだよシン、またそんなこと言ってんのか……まっ、その考え方自体は嫌いじゃねえけどな! 男たるもの、一番大切なのは意思の強さだ! どんだけ実力が劣っていようと、戦う意志さえありゃ問題ねえよ!」
「あらあら、これだから脳筋は……シン、頭の中で色々と考え込むのは構いませんが、それを表に出してはいきません。どんな時でも気高く、優雅に、美しく。それが最も重要なことです」
「2人とも、何を言っているんですか? 何より必要なものは知性と誇りです。シンさん、いついかなる時でも、思考することだけはやめてはいけませんよ」
筋骨隆々の肉体に、茶色の短髪が似合う男性――戦士ガレン。
魅力的なプロポーションに、透き通るような輝く桃色の長髪と、すれ違った者全ての目を引くほどの美貌を持った少女――聖女シエラ。
黄緑色の髪に、モノクルをつけた知性的な男性――賢者セドリック。
パーティーに入ってから何回目か分からない三者三様の主張を聞いた僕はくすりと笑った。
アルトさんだけじゃない。【
「はい、頑張ります!」
だからこそ僕はいつものように、全力でそう頷いた。
その後、再び探索を始めたアルトさんたちの背中を眺めながら、僕はふと、いつになればこの人たちに追いつけるのだろうかと考え始めた。
その流れのまま、僕は自分のステータスを表示する。
――――――――――――――
シン 15歳 レベル:30
称号:なし
HP:300/300 MP:85/85
攻撃力:80
防御力:70
知 力:45
敏捷性:60
幸 運:45
ユニークスキル:【無限再生】
通常スキル:なし
――――――――――――――
【無限再生】
・ユニークスキル
・対象者が傷を負った際、自動で再生する。
――――――――――――――
ステータスとスキル。それは神から与えられた、人類が魔物と戦うための力。
現在、僕のレベルは30となっており、これは冒険者歴1年の平均である20よりかなり高い。
これも全てはアルトさんたちのおかげで、安全に格上の魔物と戦って経験値を稼げるからだ。
続けて、僕はスキル欄に視線を落とす。
そこにははっきりと、ユニークスキル【無限再生】と書かれていた。
――ユニークスキル。
それはスキルの中でも特別な、この世で1人しか扱えないものを指す。
その特徴として、通常のスキルに比べて非常に強力な効果を有しているものが多い。
しかし、僕が持つユニークスキル【無限再生】は傷を自動で癒してくれるという、ただそれだけのスキルだった。
便利ではあるものの、その効果は低級の回復魔法にすら及ばない。
そのため昔から、周囲からは外れスキルだと言われていた。
実を言うと、初めてアルトさんからパーティーに誘われた時、僕はこのユニークスキルがあるからだと考えていた。
本当の効果は大したことがないと伝える時、見限られるんじゃないかと不安になり、胸が破裂しそうだったことは今でも克明に思い出せる。
けど、アルトさんは違った。僕の【無限再生】が外れスキルだと知ってからも、変わらず僕を優しく受け入れてくれたのだ。
だからこそ僕は、改めて思う。
一刻も早く強くなり、この人たちの力になりたいと。
(……まっ、それが何年後になるかは分からないんだけどね)
現在の僕のレベルは30。
それに対しアルトさんたち――実は今日同行していないだけでもう一人メンバーがいるのだが、彼を合わせた5人の平均レベルは300超え。
僕がそこに到達するには少なくとも10年はかかる。
その間、アルトさんたちも成長を続けることを考慮すれば、実際に追いつけるのはさらに先となるだろう。
(それでもやるんだ、僕は!)
受けた恩を返すため。
僕は改めて、心の中でそう誓うのだった。
◇◆◇
それから数十分後。
中に足を踏み入れた僕たちの前に、ダンジョンボスが出現する。
「ガルルルゥゥゥゥゥ」
そこにいたのは、黒色の毛並みが特徴的な獣型の魔物だった。
その魔物は唸り声を上げながらこちらを睨みつけてくる。
僕は魔物のステータスを確認した。
――――――――――――――
【ブラック・ファング】
・レベル:30
・ダンジョンボス:【黒きアビス】
――――――――――――――
すると偶然にも、魔物のレベルは僕と同じだった。
「さて。今回は新規ダンジョンの調査依頼を受けてきたわけだから、攻略報酬を確かめるためにボスも倒す必要があるんだが……」
アルトさんはそう言いながら、ちらりと僕に視線を向ける。
「せっかくだ。このレベルならシン、お前が1人で倒してみろ」
「はっ、はい!」
僕はその提案に頷いた後、腰元から短剣を抜いてブラック・ファングと向かい合った。
魔物を倒した際に得られる経験値は、自分より格上であるほど多く、格下であるほど少なくなる。
そのためこういった場合、アルトさんはいつも僕に戦闘を任せてくれていた。
皆が万が一の場合に備えてくれている中で、僕は安全にレベルアップできるのだ。
今回も、その例に洩れることはなく――
「――はあっ!」
「ギャウッ!?」
――戦闘開始から約5分後。
僕の振るった短剣がブラック・ファングの胸元を見事に深く切り裂き、それがトドメとなった。
するとその直後、幾つかのシステム音が鳴り響く。
『ダンジョンボスを討伐しました』
『経験値獲得 レベルが1アップしました』
『攻略報酬
システム音を聞いた僕は、強く拳を握りしめた。
「やった、レベルアップだ!」
確かな満足感と共に、僕は自分のステータスを確認する。
――――――――――――――
シン 15歳 レベル:31
称号:なし
HP:263/310 MP:89/89
攻撃力:81
防御力:71
知 力:46
敏捷性:61
幸 運:46
ユニークスキル:【無限再生】
通常スキル:なし
――――――――――――――
先ほどと比べたら、各パラメータが少しずつ上昇しているのが分かる。
ちなみにだが、レベルが1上がるごとにHPとMPは1~10の中でランダムの値が、攻撃力などの5つのパラメータはそれぞれ1上がることになっている。
そしてそれとは別枠で
しかし、どうやら今回は違う様子。
レベルアップによる
そして、その恩恵を受けたのは僕だけじゃなかった。
「ほう、ここの攻略報酬はSPが10か。レベル30のボスにしては望外だな」
後ろではアルトさんを含めた全員が、自分のステータスを見ながら感慨深そうな表情を浮かべていた。
魔物と戦った本人にしか与えられない経験値とは違い、ダンジョン攻略報酬はその場にいるパーティー全員に与えられる。
だからこそ、アルトさんたちも同じ報酬を受け取ることができたのだ。
そして今、彼がレベル30のボスにしては望外と言った件だが、これも少し考えれば察しが付くだろう。
SPが10といえば、単純計算で1レベルアップしたに等しい。
HPとMPに使用できないという欠点はあるものの、その全てを好きなパラメータに振り分けられると考えれば、1レベルアップ以上の価値があると考える人もいるかもしれない。
さて。この話を聞くと、魔物を倒して経験値を稼ぐより、こういった報酬をもらえるダンジョンを何回も攻略した方が効率的に成長できるんじゃないかと思う人もいるだろう。
しかし残念ながら、それは不可能となっている。
というのも――
「しかし、そうなると残念でならないな。同じダンジョンでは、一度しか攻略報酬をもらえないなんて」
――今、アルトさんが言った通りだ。
ダンジョン攻略報酬は、同じダンジョンにつき1回しかもらえない。
どういう原理かまでは判明していないが、高名の学者たちによると、攻略者の魂が情報としてダンジョンに記録されているのではないか――などといった推測がされている。
いずれにせよ、はっきりしていることは一つ。
(結局、一歩一歩前に進んでいくしかないってことだよね)
「じゃあ、そろそろ戻るぞ」
「はい!」
そんな結論を出した後、僕はアルトさんの後を追うのだった。
――――僕たちの前に想定外の光景が飛び込んできたのは、それからわずか1分後のことだった。
―――――――――――――――
新連載です!
もしよろしければ、
・本作をフォロー
・下の『☆で称える』の+ボタンを3回押す
をしたうえで、本作を読み進めていただけると幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます