鼠と改竄
あにょこーにょ
1
ニュウスペエパアの鼠が、よくよくみたら竄に変わっていた。
いつから。いつからそんなことになっていたんだろう。
昨日の社会の時間。そのとき雪舟が書いたねずみは確かに鼠だった。写真がたくさん載った資料集で、かわいいな、とおもったはずだもの。ううん、確信はできないわ。なんとなくミニチュアみたいなキャプションは流し読みしたもの。
図書室で借りた、動物実験の本に載っていたハツカネズミ、それ以外のネズミは、どうだったかしら。きっと、カタカナでしか書いていなかったような気がする。あるいは、ラット。
じゃあ。いまや、鼠は何のための字なのだろう。わたしにはよくわからない。いったい何が本当なんだろう。
わたしは、新聞記事の竄が、ただの鼠の誤植だと思えなかった。そういう勘、みたいなものがはたらいた気がするのだもの。
わたし、鼠なんて漢字ほとんど書いたことない。ほとんどひらがなか、カタカナかで事足りるし、お正月だって子年なのだもの。忘れ去られているのに、共通認識としてぼんやりとイメージできるものなんだ。
それにしても、気付くのが遅れた。
世界の変化に、──それがたとえ、小さな変化だったとしても──気づけなかったのはなんという失態。わたしはぐちょぐちょに潰れてつちの上に落ちたトマトだわ。小さな鞘が六つも七つもあるゼリー状の種が崩れて、ばらばらにころげたそれ。
気づく時間のラグが、誰かと誰かの間に生まれてしまった。もっと言えば、わたしと兄の間に生まれた。
兄はひどく女を馬鹿にしたような口をしばしば。特にわたしと妹のきなに関しては当たりが強いもの、早く一人暮らしをしたいわ。
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