魔刃騎甲外伝~~猟騎山脈~~
もりくぼの小隊
雪山を歩く魔獣
雪山と氷の小国領ミブフーラ──ロンキマレプ山脈
一年中と雪が降り積もる高き標高の「ロンキマレプ
アイソレーションな空間を生身で生きることを許されるのは毛皮持ちな生物であり、体表に
灰と積もれた雪雲空の中では魔力溢れる陽光が届かぬ時間の方が長くはあるが、確かに魔獣の棲息する環境下を作り出しているのだ。ミブフーラの山脈に住まう山魔獣達は生き抜くために芳しい魔結晶を求め喰らい、周辺の
そして、この白き世界を悠々と己が存在を主張するかのように巨躯を揺すり歩かせる生物がひとつ。それは山脈に住まう動物か──否、ゴウと過酷な吹雪く環境下でこれほどまでに悠々と歩める生物は「
その体表に生やした
悠々と歩み進める白毛のチグハグ魔獣の前に自然とは違う造られた空間というものを
魔獣は廃村に足を踏み入れ、中心にある雪解け水を貯めた消雪井戸へと向かい滑車と桶の着いた屋根部を柱ごと爪で力任せに破壊すると井戸の奥に顔を埋めて覗き込み鼻を鳴らした。感じられる匂いは溜まった水と苔臭さのみである
体表に生えた魔結晶に何かがぶつかる衝撃を感じ、魔獣は身体を大きく浮かせ
魔獣はあれの存在も知っている。小さな弱い獲物よりも多少大きな二足立ち。邪魔な殻に覆われた獲物。多少大きなだけで魔獣よりも小さな事には変わりない殻の二足立ちは何度か狩り獲物として仕留めたという野性の自信はある。この魔獣に恐れという概念は無い。あの殻の下には旨味のある魔結晶が隠れている事も知っている。色の識別のできぬ琥珀色の眼は屋根上の二足立ちをとらえたまま、筒から撃ち出された氷のつぶてを見つめ自慢の牙にぶつかり、雪上に一瞬と転がされた。牙には衝撃こそはあるものの傷ひとつとつけられてはいない。小さき獲物の反撃行動に魔獣はガルガァな顔に怒りをあらわとし雪撒き散らし立ち上がる。屋根上の獲物に向けてその殻を食い破ってやると激怒した咆哮を氷雪の世界にあげた。
小さき獲物──
いま、両者の狩りの時がきた。
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