わらしべ忘者

1/2初恋、あるいは最後の春休みの

わらしべ忘者

「記憶にございま千円ちょうだい👌💰」

 バズった。これがバズった。十五秒あれば誰でもバズれるといったのはウォーホルだったか、ダンディ坂野だったかは忘れたが、俺は江戸っ子、ちっちゃいことは気にするな♪とにかくこれで千円貰えたのだ。これでいいのだⒸ天才バカボン。

 三十九歳で初当選してから議員生活四十年、野鳥観察クラブに所属してから五十年、投稿写真誌にアイドルのパンチラ写真を送ってから六十年、目の前に転がるチャンスはいつ如何なる時も見逃したことはなかった。もちろん今回も。バズって四秒で配信。「有権者の皆様、ご声援スーパーチャットありがとうございます!!!こちらネットのおもちゃでございます。ありがとうございます!!! PayPayのQRコードだけでもスクショしていってください!!!」これぞドブ板。千も積もれば万となる。万も積もれば億となる。こうして俺は億万長者になった。ようやく自由だーーー!!!!ドン!!!!もう維新の政治家や自民党のチルドレンどもみたく眼を爛々に勃起させて必死こかなくてもいいもんネ!オラオラオラ!俺がこの世の王だもんね~!!!!


アサーーー!!!☀️🕊🎌

いつの間にか眠っていたようだ。って朝じゃないじゃない。これフラッシュ。フラッシュ炊かれてる。今日は金曜、フライデーなのに。

「ちょっと!話聞いてますか!質問に答えてください」

そう怒鳴る記者の声で意識を引き戻した俺は、状況をようやく思い出した。そう、六十年前、本名でスナイパーやってた俺は、当時の盗撮写真が発掘されたことで、その是非を問われ、記者会見を開くことになったのだ。眩い光の中、記者の掲げる雑誌にふと目をやると、飛び込んできたのは、カラフルなTフロント。どうやら今はピンクサターンについての質問に答える番だった。それはともかく、そのとき雑誌から貰った謝礼は千円だった。だから俺はつい咄嗟にこう言ったのだ。

「記憶にございま千円ちょうだい👌💰」

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