コズミックデーモンズ

べっ紅飴

第1話 隕石でっけぇ〜

こんなの聞いてない!


思わずそうぼやきたくなるような光景が空に広がっていた。


言うなれば、超巨大隕石。


空をすっぽりと覆い尽くしてしまって、昼時にも関わらず夜よりも真っ暗だった。


3時間前に突如として現れたそれはゆっくりと時間をかけて俺たちの住んでいる地上へと迫ってきていた。


テレビを付けるとどのチャンネルも緊急特番。スマホでSNSを開けばトレンドに人類滅亡。


誰がどう見ても詰みだ。


あんな隕石落ちてきたらシェルターに避難しようが全く無意味だろう。


誰もが空を見上げるばかりだ。


三連休の二日目で、残り一日休みを残して人類滅亡。せめて明日にしろと俺は思った。


あまりの隕石の大きさに月並みな感想しか浮かばなかった。


「でっけー」


あまりにも受け入れがたい現実に直面したとき、人は呆然とするだけで、日頃は世界滅亡の日はやりたいようにやるなんて考えておきながら、その実何もしないのである。というより、あんな物を見せられてしまっては何もやる気など起きない。


思うところがあるとすれば、せめて安らかに死にたいなという無理な要求のみである。


これから待ち受けるのは十中八九悲惨な死だ。エネルギー保存則によって巨大隕石の位置エネルギーやら運動エネルギーやらが俺の人生、あるいは人類史上で見たこともないような破壊を撒き散らして、その巻き添えで多分死ぬ。

それとも、直接潰されるのだろうか。


どちらにしろ、唾液が苦くなるような嫌な末路だ。


ただ、どうやったってその結末は避けようがないことはすでに明らかだから、嫌だとしても諦めて受け入れる以外の道はないだろう。


ところどころミサイルか何かが打ち込まれたような爆発が見えるが、どー見ても焼け石に水である。


万事休す。無駄に足掻かず、ほどほどに終末を受け入れるべきじゃなかろうか。


あれを見てなんとかしようというのは往生銀が悪いとしか言いようがない。


ただ、気持ちはわからんでもなかった。


あんな隕石落ちてきたら絶対に痛いのは間違いない。


俺が地球だったらあまりの痛さに泣いているところだろう。


だから、できれば落ちてきてほしくないと思うのは当然の感情だろう。


そこでもしかしたらと、ミサイルに希望を託してしまうのはもう仕方のないことだ。


今際の際だし、使えるものは何でも使う。


もはやそれは生き延びるためというよりは、やはり滅びを受け入れられないからくる現実逃避なのである。


ただ、俺はそんな直接的な手段なんて持ち合わせていないから、やはり落ちてくるのを眺めているか、家の中でゴロゴロするかしかない。


あんな隕石アニメの中だけにしとけよ…


そんなことを思いながら俺は家の中の薬箱を漁った。


目当てのものが見つかると、箱から取り出して3錠の薬をプラスチックの包から押し出すようにして抜き取った。


あと何時間後に隕石が落ちてくるのか分からないが、どうせ何していようが死ぬし、数時間後に死ぬ事がわかりきっているのになにかに集中できるわけがないのだ。


今か今かと終わりを待ち受ける恐怖を味わうぐらいなる、いっそ眠ったまま理由もわからずに死んだほうがマシかもしれない。


そんないい加減な考えで、俺は睡眠薬を3錠服用することにしたのである。


朝ご飯は抜いていたから胃の中は空っぽであるため、きっとすぐに効き目が現れるだろう。


プラシーボ効果か、もうすでに眠たいような気がした。


自室にて、眠りやすいようにパジャマに着替えると、電気を消してベッドに潜り込み、布団にくるまりながらそのまま目を閉じ、薬が効いてくるのとともに眠りについた。

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