5-6

……歌が、聞こえる。

酷く優しくて、同時に泣きたいほど切ない歌が。


「目が覚めたのか」


私が起きたのに気づき、窓辺に座っていた伶龍は目尻を下げて柔らかく笑った。

同時に歌が、途切れる。


「……歌なんて歌えたんだ?」


布団を胸もとまで引き上げ、起き上がる。


「んー?

一応」


すぐに傍に来て、伶龍は私の隣に座った。


「なんて歌?」


「知らねー。

なんか自然と、口から出てた」


ふふっと小さく笑い、彼が額に口付けを落としてくる。

それがくすぐったくて心地いい。


「伶龍の〝伶〟って音楽を奏する人って意味なんだって。

伶龍を打ってたときの音がまるで音楽みたいだったからこの字にしたって書いてあったよ」


伶龍を拝領したとき、由来等の書き付けもついてきた。

そこにはそう、書いてあったのだ。


「俺が音楽とか似合わねー」


伶龍はおかしそうに笑っているが、私は似合うと思うよ。

今の歌、凄く素敵だったもの。


「そうだ、伶龍。

クリスマス!

クリスマスの準備、したんだよ?

イブは大穢れ出現予想日だし、当日も後処理で忙しくてできないだろうけど。

落ち着いたらクリスマスパーティやろうよ」


プレゼントも料理も手配したのだ。

なのに、無駄にするのは嫌だ。


「バカ、そういうのは今言うな!

死亡フラグってヤツになるだろーが!」


「あ……」


慌てて伶龍が私の口を塞いでくる。

言われればこれは、完全に死亡フラグってヤツだ。

うかつな自分に腹が立つ。


「……ごめん」


「いや、いい」


落ち込んでしまった私の頭を、慰めるように彼が軽くぽんぽんと叩く。


「翠がそうやって、俺のために準備してくれたのは嬉しいし」


軽く、伶龍の唇が重なる。

それだけで機嫌がよくなってる私って、チョロいんだろうか。


「勝って帰るぞ。

勝って帰って、それで翠からプレゼントをもらう」


「うん」


決意を表すように、私の肩を抱く伶龍の手に力が入った。


「でも、つまんねーもんだったら許さねぇからな」


私の顔をのぞき込み、揶揄うように笑った彼が鼻を摘まんでくる。


「ひど。

ちゃんと伶龍の喜ぶもの、準備してるって」


それに私も笑って返す。

伶龍の喜ぶ顔を想像してプレゼントを準備した。

きっと気に入ってくれるはず。

必ず勝って帰って、伶龍に渡すんだ。


「いよいよだな」


「……そうだね」


ふたり仲良く、寄り添う。

密着する肌が、隣に感じる体温が、私を落ち着かせた。


「俺が絶対に翠を守る。

オマエの母親の刀のように、翠を死なせたりしねぇ。

だから、安心していい」


「うん。

任せた」


きっと、伶龍と一緒なら大丈夫。

どんな穢れだって、祓ってみせる。

夜が明け、決戦の朝になろうとしていた。

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