特別な日なのに…

フジノハラ

第1話


私には三分以内にやらなければならないことがあった


何故なら今日は、彼とのデートの日なのだ。

それなのに、まだ時間がある事で油断してしまったのだ。

それがいけなかった。

つい、うたた寝してしまったのだ。

そして気がつけば、時計の秒針は無情にも絶えず進んでいる。予定の時間がもう目の前に差し掛かっていた。

家を出る時間まで、後三分を切ってしまっているではないか。

自分の姿を確認する。服は着替えもすんでいるし、荷物も大丈夫。残るは化粧だけ!三分で化粧を仕上げる!?

っていうか、正確には2分40秒しかないんだけど!?

無理ゲーじゃんっ、もう泣きそう〜

今から最低でも、ファンデして、チークにアイブロー、つけま…いける?いけるっ?いや、やるんだ!!

そうと決めたら化粧品を広げ鏡を立てて、ファンデーションは時短でクッションファンデを塗って。チークで頬と鼻横を強調。アイブローを軽く塗って。つけまにのりをつけて軽く乾くまでの間にビューラーでまつ毛を整えて、つけまをつけて、よしっ、出来た!

さぁ!時間は!!

、、、6分掛かってしまった。

やばいやばいやばいっ

慌ててポーチを引っ張り家をあとにする。走りながら彼に『ごめん!10分遅れる。ホントにごめん!』とスマホでメールを打ち込む。


***


朝から予感はあったんだ…。

大事な日なのに、朝顔を洗って髪を梳かして、ワックスをつけようとしたら、ワックスが雀の涙程度になっていた。

兄貴が全部使いやがったんだ。アイツは

いつもワックスをがっつり使って髪を固めるから、少ししかないワックスを使ってなんとか髪を整える。

確かに、そろそろ買いにいかなければとは思っていたけど、まだ大丈夫な量はあったはずだ。それなのに、あの兄貴ときたら…。

まあ、それはさておき、待ち合わせの時間まで余裕の時間ではあるが、早めに出て待ち合わせ場所までいこう。

しばらく歩いていると、近くを歩いていたおばあちゃんの手押し車に乗っていた買い物袋の中身がちょっとした段差の衝撃で落ちてしまった。

俺はとっさに拾うのを手伝い、おばあさんに渡してその場で別れた。

それからまた、しばらく歩いた先。

信号待ちの間に道に迷った40代くらいのおばさんに声をかけられ、身振り手振りで説明をするが土地に明るくない様子のおばさんには伝わらず。やむなく近くまで道案内をする羽目に…。

道案内に時間をくってしまったので、スマホで時間を確認してみる。

、、、遅刻決定だ!やばい!

急いで遅れる旨をメールで伝え、走って待ち合わせ場所まで急ぐ。


走り続けて、待ち合わせ場所が見えてきた。

あ、人影が見えた。

「あっごめん!待たせちゃって!」

「あ、おーい。」

思わず声を掛けた俺の隣から彼女の声が被るように聞こえた。

「「あれ?」」

お互いに向き合い。じゃあ、今声を掛けた待ち合わせ場所にいる全く知らない人物に声をかけたのか?と、そう思うと可笑しくて仕方なくて。

二人して笑って仕舞う。

「えっ、うそっ、俺たち二人で知らない人に声かけるとか。‪ウケる‪w‪w‪」

「ホントにっ、もうっ、二人して今着くとかありえないでしょ〜」


ひとしきり笑った後で、二人で喫茶店で珈琲を飲みながら。遅れてきてしまったあれやこれやを話しながら笑い合う。

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特別な日なのに… フジノハラ @sakutarou46

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