第2話 事故物件に泊まろ!

 底辺ウーチューバーである漆虎万太郎は、会社で転勤命令が出たという理由で引っ越すことになった・・・という建て前で、市内の不動産屋さんにとある部屋の内見を依頼した。

 とある部屋というのはネットでも市内というか日本でも有数の事故物件て、少なくとも10年で店子が三人も死んでいるという。調べたら病死、自死そして殺人。ここまでくると呪いである。


「えっと、この部屋かなり安いですよね」


「えっ・・・えぇ。まぁ所謂、事故物件ですので・・・」


 不動産屋さんの顔色が変わる。事故物件というのは事案以降3年までは借り主に告知する義務があるのだ。


「あぁ、自分、霊感0なんでそう言うの気にしないんですよ。ただ・・・」


「ただ?」


「一度泊まらせて貰えませんか?その部屋に。出なければ、霊を感じられなければ借ります」


 漆虎万太郎はニッコリ笑った。



「はい。万太郎です」


 ドローンカメラを起動して万太郎は挨拶する。


「今日は市内某所にある事故物件にやって来ました。まぁ、どういう事故物件か話しちゃうと不動産屋さんに迷惑がかかるんで内緒だけど、出るって事で有名な奴です」


 そう。万太郎の今回の目的は、幽霊が出るという事故物件に一晩泊まってみました!という動画を放送することなのだ。


「ちなみに、この部屋を借りるための内覧というていで借りているので、今回限りのネタですね」


 動画を撮ることは秘密なので、バレたら業界に回覧が周り二度と一晩借りるなんてことは出来ないだろうし、バレない訳がない。


「そろそろランタンを点けます」


 日が暮れて来たので、リュックサックから大きな置き時計とキャンプ用のランタンを取り出して点ける。電気の契約をしていないので当然だ。


「あと変身しま~す」


 腕のバッチを天に掲げてタロウーと叫ぶ。普通は

 全長16メートルの巨人だが、今は1.6メートルの全身銀色のタイツで、耳の所にはノコギリクワガタの大顎のような角を持つコスプレ男となって姿を現す。


 カチッ。コチッ。


 置き時計の針の音をBGMに1LDKの部屋の真ん中で体育座りをして時間が過ぎるのを待つ。


 やがて、草木も眠る丑三つ時・・・


 ガタガタ


 いきなりトイレの戸が音を立てる。


「ウルトラアイ!」


 万太郎の目が光ると、トイレのノブをガタガタと鳴らしている鳥頭の人間が浮かび上がった。


「幽霊の正体見たり枯れ尾花!」


 万太郎は立ち上がって鳥頭人間にタックルをかます。そして、ノコギリクワガタの大顎のような角が鳥頭人間にガッチリと挟み込む。


 ギョエッ!


 大顎に挟まれた鳥頭人間はバタバタともがくが、ギリギリと締め上げるとやがて動かなくなる。


「確か・・・あぁゴースト星人か」


 携帯のアプリで鳥頭人間を写して検索すると、該当する星人が表示される。どうやら宇宙警察庁から指名手配されている宇宙人だ。

 そのまま携帯の短縮ダイヤルを押す。


「ハンタ一登録番号10026万太郎です。指名手配中の宇宙人を逮捕したので、パトロール艦を派遣してください。はい。指名手配犯は地球で幽霊を装って事故物件に潜伏していました。えぇ。宇宙船は発見してません。あぁ。建物の所有者は自分ではありません。はい。不動産屋さんの連絡先は報告書に・・・はい。よろしくお願いします」


 明け方近く宇宙警察庁の人間がやってきてゴースト星人を逮捕。ドローンカメラの映像は証拠として宇宙警察庁に持って行かれたが、ゴースト星人の逮捕に協力したという事で報奨金が出たので良しとする万太郎であった。

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