KAC2024に参加するお話

那田野狐

第1話 ウ一チューバー漆虎万太郎の話

 底辺ウーチューバーである漆虎万太郎には三分以内にやらねばならない事があった。

 それは、怪獣狩り。地球では有名な宇宙人ヒーローが、地上では3分間しか活動出来ないということが由来で、ウーチューブにおける怪獣狩りというジャンルでは、怪獣狩りに3分以上の時間をかけてはいけない事になっている。まあ、万太郎は有名な宇宙人ヒーローとは違い、5分でも10分でも活動出来るのだが。


「アンギャア~」


 ここ惑星ドンガウの大森林には、尻尾を含めて全長10メートルはある巨大な緑色のトカゲ型の生物。地球で言えばカメレオンに姿も生態もよく似た生物がいる。


「地球の皆さん。じゃあ行きます」


 特撮風の撮影に特化したAIドローンを起動させると、大きな砂時計をひっくり返して、腕のバッチを天に掲げてタロウーと叫ぶ。


 バッチが輝いて全長16メートルの巨人が姿を表す。

 全身銀色のタイツで、耳の所にはノコギリクワガタの大顎のような角。

 胸には青く輝くランプみたいなモノがついている。なお、地球の動画サイトウーチューブではニセトラマンタロウと呼ばれている。


「へあ!」


 先ずはカメレオン怪獣にチョップ。チョップ。チョップ。

 いきなり大技は使わない。耐えられたらこちらがピンチになるから。


「ぎゃす」


 カメレオン怪獣の尻尾攻撃。滅茶苦茶痛い。

 2発目が横腹に・・・しかしガッチリ掴んで、回る回るジャイアントスイング!でカメレオン怪獣を放り投げる。

 原生林を派手になぎ倒してふらふらのカメレオン怪獣。


「へあ!」


 助走をつけてカメレオン怪獣にジャンプしてからのドロップキック。

 が、カメレオン怪獣の口から長い舌が伸びてきて足に巻き付く。


 ぶん


 物凄い勢いで万太郎は地面に叩きつけられる。


 ビコン。ビコン。ビコン。


 万太郎の胸に装着したランプが青から赤く点灯を始める。

 活動限界を告げるものではなくタイムアップを告げるタイマーだ。


「へぁ!」


 カメレオン怪獣に近づき抱えてから地面に叩きつける。


『八つ切りカッター』


 カメレオン怪獣目掛けて万太郎は必殺技である三か月状の光の刃を放つ。


 ザシュ


 カメレオン怪獣が首、四肢、尻尾に綺麗に切り分けられる。


 ジリリリ・・・


 どうやら3分以内に倒せたようだ。


「ジュワッチ!」


 AIドローンにビシッと合図をしてドローンの電源を落とす。

 その後、そそくさとカメレオン怪獣を無限収納が出来るアイテム袋に放り込む。

 カメレオン怪獣は、肉が美味しく、皮は隠蔽能力のある衣料品の素材になる。地球では取り扱いされていないが、隣りの銀河に持ち込めばそこそこ高く買い取ってくれるだろう。

 今日の動画は4桁行けばいいなあと思う万太郎であった。

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