身に覚えはありますか?

てぃ

人生、諦めも肝心


 彼には三分以内にやらなければならないことがあった。

 

 ──皆さんもソーシャルネットワークゲーム、ソシャゲはご存じだろう。

 一言で説明するなら「我々の日々の時間とたまに金を食い潰す例のアレ」、いわゆる闇のゲームである。


 ソシャゲはあの手この手で我々を縛りつけてくるのだが、その施策の中にログインボーナスと呼ばれるものがある。


 ログインボーナス──

 それは一日一回ゲームを起動してプレイ画面に推移する事で達成される皆勤賞付きのスタンプカードサービスだ。


 昔はちょっとしたアイテムを配る程度だったが、今は期間限定と称して配る報酬を豪華にしている事も多い。黎明期れいめいきなど連続ログインボーナスと設定されて、一日でも逃すとそれっきりで以後は貰えず打ち切りなんてのもあった。


 ……前置きはここまでにしよう。


 彼には三分以内にやらなければならないことがあった。


 ゲームを起動して、ログインボーナスを受け取る。

 なんだ、簡単じゃないか。──それを5つである。


「……えっ!? 三分で5つのゲームを!?」


 ご存じの通り、ソシャゲの一日の切り替わり時間は大体が足並みを揃えている。

 ──そう、足並みが揃ってしまっているのだ。タスクが分散することなく渋滞してしまっている。優先順位をつけて、やっつけていくしかない。


 まずは取り逃がすとヤバいメインから。

 万全を期してスマホでログイン。ここだけは死守する。


 次にメインその2。ログインはPCだ。最近はPCと連携して出来るゲームも増え、なんならゲーム機と同期してるものまである。


 そして、サブゲー。メインその2と並行してログイン。

 最近流行はやりのリッチなゲームで容量をバカ食いするいつものやつだ。起動や通信に時間がかかり、これが大変なロスになる。


 最新PCのスペックなら出来たかもしれないが、そうでないからそれで終わりだ。

 現実は非情である。必要な犠牲であった。こうしたのが積もり積もってソシャゲは新陳代謝するのだなぁ。


<おわり>

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