プラネテス

麻婆ナス

プロローグ

世界は複雑である。

 今更改めて明言するほどの事でもない事実だが、自分がその真実に気が付いたのは比較的早いほうだったように思う。

 他人との関係、異性との適切な距離、友人との仲直りの仕方、反抗期のなり方に思春期の隠し方。もっと規模を大きくすれば国同士の関係や社会問題、さらに広げれば世界の成り立ちからその真理にまで論点は及ぶだろう。

 世界という単語そのものが多くの意味を持ち、そしてその一つ一つが糸くずのように複雑に絡み合っている。欲望、欺瞞、羞恥、恐怖、憎悪。幼い自分にとって世界は茫漠で、それでいてとても暗く、未来や希望といった実体のない明りだけで踏み出すにはあまりに心細かった。

 ───だからだろうか。

 あの日、あの時、君に出会った時に感じた強烈な光を、決して手放してはならないと、そう思った。俺と同じ景色を見て、何を思うのだろうか。君の世界にはどう映っているのだろうか。


 ───同じであればいいな、とそう思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る