終末のバッファロー
闇のま人(カクヨムのすがた)
Episode:I 猛牛大海嘯
なんという光景だろう。
昨日まで何の変哲もなかった空が。
街が。
人が。
「いやぁぁあ!」
「頑張れ、諦めるな!」
「どけよバカ!」
「お母さぁぁぁん!」
「アハハ……終わりだよどのみち」
跡形もなく
此処から逃げなきゃ、生き延びなきゃ。
思うが早いか、僕は駆け出した。
「くそっ、くそっ…くそォ!!」
僕は遮二無二走り、高台を目指す。
どこか遠くへ逃げないと。
―でも何処へ?
何処だっていい、この
―だが本当に抜け出せるのか?
考えてる暇なんてないんだよ。
―それなのに何故疑問は増えるんだ?
自問自答を繰り返しながら、何とか高台までたどり着こうとした、その時だった。
「助けて……」
消え入りそうな声と共に、僕の足を何かが掴んだ。
「何だ、ッッッ!」
慌てて見やると、そこには息も絶え絶えで、ボロボロの女の子が這いつくばっていた。
年は僕と同じくらいだろうか、その娘は足を負傷していて歩けなそうだ。
恐らくやっとの思いでここまで来たはいいが、足の怪我と疲労で動けないのだろう。
「大丈夫、しっかりして!」
僕は少女に声をかけると、彼女は「ごめんなさい、歩けないの……」と告げた。
ここで見捨てるわけにはいかない。
意を決して少女をおぶり、目的地まで目指す。
「少し急ぐよ……捕まってて!!」
あと少しだ、あとちょっとで……
次第に急になっていく勾配を、息を切らしながら登り切る。
やっとの思いで高台までたどり着き、肩で息をしながら呼吸を整える。
よし、ここまで来れば安心だ。
大きく溜め息をつき、落ち着いた気持ちで下を見る。
「!!!」
言葉を失った。
幾千、幾万、幾億―
いいや、数えることすらできないような
それらが大きなうなり声をあげて、猛然と大地をかけ、世界を押し流していく。
さながらそれは
「あ、ア……ああ!!」
後ろで彼女が、声にならないような声を挙げ泣いている。
「なんだよこれ……どうすりゃいいんだよ」
終末の猛牛が、僕たちの日常を食らいつくしたんだ。
終末のバッファロー 闇のま人(カクヨムのすがた) @yam1n0maj1n
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