私が主人公になるまで

半私半消

打倒B級パニックムービー!

私には三分以内にやらなければならないことがあった。

この物語の主人公になることだ。


サプライズニンジャ理論をご存じだろうか。突然ニンジャが登場して戦いだすのが、それまでの話よりも面白くなるのなら、唐突な展開に負ける程度のストーリーであるため刷新した方がいい、という理屈である。


しかし、今までの流れをぶった切り、何もかもめちゃくちゃにしていくのは、見ている側に爽快感をもたらす。一定の面白さが担保されているようなものだ。この一定ラインを超えるには、どんな風に話が進んでいくのか知りたくなる状況設定や、何を考えてどう動くかを見たいと思わせるキャラクターが必要なのだ。


そして、世界はそれらを用意できなかったのだと思う。だから面白くなるようにテコ入れされたのだ。いや、テコ入れのつもりならニンジャを寄越すはずだが、現れたのは、全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れだった。柵を、家を、橋を、道を壊し。筋道も、道理も、脈絡も、ストーリーも壊しながら。

だからあれは、この世界の添削ではなく、削除のためにやってきたのだろう。


この考えに至ったのは、この地域へのバッファローの群れの到達予想時間が、三分を切ってからだった。バッファローの驚異的な数とスピードに動転していたため、たびたび物理法則を無視して発生するバッファローに対して考えるのは無駄だと半ば諦めていたため、何よりニンジャでなかったために気付くのが遅くなってしまった。


さらに考えを深める。この世界を消去する消しゴムがバッファローなら、鉛筆は誰だ? 物語を進め、世界を生き長らえさせられる存在は? 主人公はどこに?

いや、この世界の主人公は面白さの一定ラインを越えられなかったのだろう。ならば主人公は降板したのか? 不在のまま世界が回っているのか?

だったら今、新たな主人公を誕生させる。

私が主人公になって、このBbuffalo級パニックムービーよりも面白いストーリーにしてみせる。

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