突進してくる彼女らは、バッファローの群れのごとく

うり北 うりこ

◯◯には三分以内にやらなければならないことがあった。


 俺には三分以内にやらなければならないことがあった。

 今か今かと待ちかまえるバッファローの群れファンたちと彼らが通る道の間に檻を作るのだ。


 なぜ、檻が必要か。

 彼らの人気が出てから穏やかな古参ファンを押し退け、自己主張をする新参ファンが現れたのだ。

 厄介なファンは次々と増え、彼らのファンはマナーが悪いとネットで話題になっている。



 そんな厄介なファンたちを、俺はバッファローと呼ぶ。

 本物のバッファローに失礼なのは百も承知だが、彼女たちは全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れのようなのだ。


 彼女らはグッズ販売では、とにかく買い漁る。一人何点と決まっている商品は人を雇って買い占める。

 そして、買えなかった良識的なファンたちが涙を流すのだ。

 本物のバッファローは物理的だが、厄介なファンは他のファンの心を破壊する。


 また、出待ちをし、彼らを守るために立っている俺らを押し退けて突進する。

 見た目は可愛いのに目がギラつき、突進してくる様は、まさにバッファロー。

 しかも、女であるということを盾にして、うっかり触れれば痴漢だと騒がれる。

 警備をしている俺たちを犯罪者にし、社会的に抹殺しようとする死神だ。

 バッファローも死神と呼ばれるので、ピッタリな異名だろう。



 そんなバッファローたちが、今日も暴走をしようとしている。

 これから出てくるアイドルを守るのが、俺らの使命だ。


 彼らが通る道にバッファローが入らないようにテープを伸ばし、後ろへと下がるように誘導する。

 文句は言うものの、まだ大人しくしているうちにテープという境界を作る。これが彼女らを入れておく檻になる。


 だが、一頭飛び出してしまった。そうすれば、もう一頭が出てくるのはいつものこと。

 彼らが出てくるまでに檻にバッファローを入れ、車までの距離を守る。


 たったの十メートル。されど、十メートル。


 三分が経った。どうにか檻に戻したバッファローが興奮している。



 俺らとバッファローの戦いが幕を開けた。




 

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突進してくる彼女らは、バッファローの群れのごとく うり北 うりこ @u-Riko

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