第40話 レイドバトル

 再び悪魔との戦いに戻った僕ら、レインさんとは交代して再び僕と雛香の2人だけだ。

 レインさんは今は僕らと交代して回復中。後で絶対に戻ってくるって言っていた。


「準備はできたかミミ」


 戦いつつミミに呼びかける。


『里楽様による告知準備完了。いつでもいけます』


 いきなりのことだったけど、里楽さんも即座に対応してくれた。


「よし、それじゃあ、アナウンスをしてくれ」


『了解しました』


 ミミとの会話が一瞬途切れ……


「イベントに参加の皆様にお知らせです」


 空からミミの声が聞こえてきた。


「こんなふうに聞こえてくるんだね……おっとっ」


「ああ、ダンジョン空間だから全体に声を響かせられるんだ……気をつけろよ」


 いわゆる天の声って感じだね。

 今も戦闘中だけど、なるべくマイナスな感情にならないように話しながら戦っている。

 それに、さっきと違って倒そうという動きよりも逃さない動きをしているので話す余裕がある。


「ただいまよりボーナスボス討伐イベントを開始いたします」


 これがあのボスを倒すために僕が考えた方法。

 ようするに人手が足りないなら皆に手伝ってもらおうっていう作戦だ。


「皆参加してくれるかな?」


「まぁ、大丈夫……でしょう」


 いきなりのボーナスボスだけど、きっと大丈夫だと思う。


「今回のボーナスボス討伐をしますと、各能力アップの種を1個ずつセットでプレゼントいたします」


 つまりあいつを倒せば種が5個分も手に入るということ。

 かなりの大盤振る舞いだ。


「これで皆ポジティブになって参加してくれるよ……ねっ」


「皆、このイベントに参加するくらいダンジョン好きだしな」


 参加者が増えたところでマイナス感情で参加されたら敵をパワーアップさせてしまう可能性がある。

 そのためのさらなる秘策もある。


「さらにラストアタックを入手した方にはもう1セット分プレゼントいたします」


 これで皆こぞってラストアタックを狙うだろう。

 絶対に勝ちを取るという感情で挑んでくれるはず。


「相手が強敵であれば強敵であるほど倒したくなるのがゲーマーって里楽さんが言ってたしな」


 この参加者を募る方法は里楽さんが考えてくれた。

 餌で釣りつつ、なおかつボス討伐に意欲をもたせる。

 僕らにとってはあいつは本物の悪魔だけど、参加している彼らにとってはあいつはただのゲームのボスなのだ。

 しかも、ボーナスチャンス。これは参加するしかない。


「こういう人の心理を誘導するのは流石里楽さんだなぁ……」


 自身もゲーマーだからこそ、こうしたら喜んで参加するっていうのがわかっている。

 いわゆるレイドバトルってやつらしい。


「むぅ、雛香だって頑張るからね」


 おっと、雛香がむくれている。


「なお、このイベントには高度知能を持ったNPCが参加いたします」


「はいはーい! 高度知能を持ったNPCでーす」


「……高度?」


 まぁ、その辺りは疑問だけど、こうしておけば僕らが参加してても変にならない。

 ちなみに、僕らの姿は僕のスキルで別人に見えるようになっている。


「そのNPCがやられるとイベントは失敗になりますのでお気をつけてください」


 こうしておけば僕ら、というか、僕自身もかなり安全になるはず。


「また、このイベントはゾンビ役等関係ないボーナスとなっておりますので皆で協力してボスを倒してください」


 疑心暗鬼のまま参加することになっても困るからね。

 協力して倒すのが目標だよ。


「それでは参加する方は中央の魔法陣から参加ください」


 よし、参加者が来るはず……


「よっし! 1番乗り……って……嘘だろ!? 浮いてるぞ!?」


 早速一人目の参加者だ。

 ちなみに、空中戦なので僕の能力で参加した人は飛べるようにしてある。


「そこの人! もう戦闘は始まってるよ! 気をつけて!」


「へっ? わっ! まじで悪魔じゃん!?」


 雛香の呼びかけに反応して、その人はすぐに武器を構えた。


「僕の力で飛べるようにしてあります。必ずあいつを倒しましょう」


 NPCっぽい台詞ってこんな感じかな?


「なるほど! 空中戦か! こりゃグッドなイベントだぜ!」


 その人は確かめるように空中で動き始める。

 適応力が高いなこの人。凄い助かる。


「俺参戦……って空!?」


「どけっ! 俺様の……ひぇええ落ちる」


「まさかこんなことになってるなんてな……」


「回復してきたぞ!」


 続々と皆参戦してきてくれてる。

 その中にはビリーさんやレインさんもいる。

 というか、レインさん、さっき戦ってたこと隠してよ。


「皆さん! あの悪魔はこちらがマイナス感情を抱くほど強くなります!」


 参加してきてくれた人にあの悪魔の情報を伝える。

 えっ? そんなことをしたらヌルゲーになる?

 なっていいんだよ。


「皆さん! 絶対に報酬を受け取りましょう!」


 おっと……


「誰がラストアタックをとっても恨みっこなしですよ!」


 僕ら合わせて22人であの悪魔をフルボッコにしてやる。

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