第27話 企画立案

 コーヒーを入れてきた後、その場でイベントの話し合いをした。


「やっぱりゴーストタウンってところは活かした方がいいと思うんだよね」


 周ってわかったけど、誰もいない街って独特な雰囲気があると思う。


「こう……寂れたというか……ちょっと不気味な感じというか」


 そういうのを活かせたらいいなぁと。


「……そうなるとホラー方向とかですか?」


「あー、それは一つありかもしれないね」


 例えば……


「誰もいない町並みに幽霊……この場合はゾンビの方がいいかな?」


「そうだね、日本の悪霊っていうのはこっちだとちょっと異質だからね」


 その辺りは宗教観の問題だからね、あんまり突っ込まない方が良い部分だ。


「ゾンビだったら、ゲームとかでも良くあるし、幽霊よりは受け入れやすいかな?」


 まぁ、ゴア表現が苦手って人もいるだろうけど、そもそもそんな人はダンジョンになんか入っていないだろうし。


「ゾンビが街に現れる……うん、定番だしわかりやすい」


 いい感じになってきた気がする。


「ゾンビとなると、大量のゾンビというのが定番ですね」


「ああ、うん、そうだね」


 大量のゾンビの中を生き残るサバイバル……


「今回の場合は、どちらかと言うと街防衛イベントみたいな感じかな?」


 夜になると蘇ってくるゾンビから拠点を防衛するみたいな……


「徹夜は大変だと思いますが」


「まぁ流石に夜中はないけど……それなりに長時間にはしたいかな? ただ戦いの時間は短くした方がいいかもね」


「戦い続けられる時間は1時間くらいですかね?」


「もっと戦えるよ!」


 うん、雛香は戦えるだろうけど。


「集中して戦えるのがってことだよ、それ以外の時間も敵がいないわけじゃなくて、そこだけは集中して戦うってイメージかな」


 普段も街中にゾンビは溢れている。けど、こっちに積極的に襲いかかってくることはない。

 だけど、とある時間になると、急にゾンビが凶暴化して大量に襲いかかってくるみたいな。


「……聞いているとちゃんとシナリオを考えたほうが良さそうですね」


「あー、うん。それはそうかも……」


 今回の場合は、知らない人同士ってこともあるわけだし、皆が協力して戦うって流れにするためにも、ざっくりとした話の流れってのは必要かもね。

 いつもみたいにダンジョンに潜ってボスを倒して終わりなんてわけじゃないし。


「まぁ、でも基本の流れとしては、ゾンビから街を防衛するってことでいいんじゃないかな?」


 あとは単純な肉付けだけ。


「暇な時間には何か攻略のアイテムを探して街を探索するってのもいいかな?」


 そうすれば、必然的に街の中を見ていくこともできるし、ちょっとした観光気分も味わえるよね。


「前のイベントと同じようにWave制にして段々敵が強くなるとかどうでしょう」


「ああ、いいね。それ採用で」


 最後の戦いに挑むために、攻略アイテムがあった方が有利に進めるとかすれば、攻略アイテムを集める意味もあるし。

 うんうん、なんかいい感じに構想が固まってきた気がする。


「フィンさん、こんな感じでどうですか?」


「うん、いいんじゃないかな? あまりゲームをやらない僕でも街を守るっていうのはシンプルでわかりやすいと思うよ」


 フィンさんからも、いい感じのリアクションが返ってきた。


「よし、それじゃあその方向性でダンジョンを……」


「……飛鳥さん、もう一捻りいれませんか?」


「えっ?」


 ダンジョンの構想を考えようとしたら、里楽さんからストップがかかった。


「確かに、ゾンビから逃れつつ街探索は面白いですが、なんというか、意外性がないなぁと」


「意外性……?」


「このままでは緊張感のあまりないイベントになってしまうのではないかと」


「そうかなぁ? 定期的に暴走したゾンビが襲いかかってくるだけでも緊張感ない?」


「それはそうですが、結局一時的なものですよね?」


 それはそうだけど……


「1日に何回その暴走が起こるかはわかりませんが、人間というのは慣れる生き物ですので」


「うーん……1日のうちに何回かやってればそりゃ慣れるか……」


 ボスとかゾンビの強さとか種類は少しずつ変えることはできると思うけど、里楽さんが言いたいのはそういうことじゃないんだよね?


「里楽さん、その口ぶりからして何か案があるんでしょ?」


 僕が尋ねると、里楽さんは頷いた。


「私が追加したい要素は、裏切り者、です」


「……裏切り者?」


「そうですね、ホラーなどでも定番じゃないですか? 皆が協力している中で実は敵側の人間だったというのは」


「あー、言われてみれば……?」


 なんか言いたいことがわかってきた。


「私の案としては、参加者をランダムで敵側の人間とします。その敵側の人間は秘密裏に他の参加者を妨害します。誰が裏切り者かわからない中、疑心暗鬼になって緊張感が生まれるでしょう」


「……人狼役……ってことだね」


「それは面白そうだね、僕もよく動画で見てたよ」


 ちょっと前に大流行したよね人狼ゲーム。確かに、あれは見ている側も楽しかった。


「……確かに、参加者の様子を生配信するって考えたら、裏切り者の行動っていうのは面白そう」


 配信を見ている人は誰が人狼かわかっている、応援している人が危なかったらハラハラするだろう。


「それに、戦いとはまた別の緊張感が生まれる……」


 1人でいたら人狼にやられてしまうかもしれない……うん、なんか有りな気がしてきた。


「どうでしょう? 飛鳥さん」


 うん、考えるまでもないね。


「採用で!」


 ルールはもうちょっと詰めなきゃいけないけど、間違いなく面白くなると思う。

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