第25話 ゴーストタウン
「叔父さんが言っていた場所はここだね」
マルチのイベントが開催している中、僕たちはフィンさんにとある街へと案内されていた。
「……思っていたよりはずっと綺麗ですね」
「人が完全にいなくなったのは割と最近って聞いたからその影響かもね」
その場所とは、以前父さんに教えてもらったゴーストタウン。
「ねぇ、フィン兄、ここってどのくらいの広さがあるの?」
「うーん? 確か50ヘクタールくらいって言ってたかな?」
「……それってどのくらいの大きさなの?」
確かに50ヘクタールって言われても全然わからない……ヘクタールって何平方メートルだっけ?
「50ヘクタールは50万平方メートル、東京ドームが約4.5万平方メートルだから、およそ10個分の広さですね」
流石里楽さん、ぱっと出てきたね。
「……おおぅ、そう聞くと結構な広さだね」
いや、東京ドームも行ったことがないけど、なんか広そうなイメージはあるよね。
「もっとわかりやすく言うと、千葉にある王国が51万平方メートルだからそれより少し小さいくらいです」
「でかっ!」
いや、思ってたより全然でかいんだけど?
こんな広い土地の価格ってとんでもないんじゃないの?
「そもそも、ここってなんでゴーストタウンになったんですか?」
「多分……交通の利便性とかが悪いからじゃないかな?」
あー、そういえば、ここまで来るのにも結構な時間かかったもんなぁ……
それに道もお世辞にも整備されているとは言いがたかった。
「あと……これは確定情報じゃないけど変な噂もあるみたい」
「変な噂?」
「うん、なんか夜な夜な悪魔が現れるだの、長くいたら気分が悪くなるだのそういうの」
あー、そういうのかぁ……
軽く見た感じ魔法的にはそういうのはなさそうな気がするけど。
だから変な気分になるとかは多分噂かな?
まぁ、人がいなくなった街が不気味なのはわかるから、そういうところから出てきた噂なんじゃないかな?
「放棄されても建物ものまだ残っているのは大きいね」
僕の能力で作り直すこともできるけど、やっぱり外観とかはそのままの方が臨場感あるし。
もともと考えてたちょっとした旅行っていうイメージを考えるならその方がいいよね。
「というか、飛鳥さん、この広さをまるまるダンジョン化とかできるんですか?」
あー、その問題もあるよなぁ……
「今は全部は流石に無理かなぁ……できるとしてせいぜい5分の1くらいだと思う」
なんとなくの概算だけど、そんな感じ。
「それでも結構な広さですね」
さっきの計算だと東京ドーム2個分だもんなぁ。
「とりあえず、一通り周ってみようか、フィンさんお願いします」
「任せて」
ちなみに、フィンさんが案内してくれているのは、父さんからの指示だ。
フィンさんは父さんの会社の人間で、今回の件の担当者になった。
もともとは別の部署の人だったんだけど、急遽異動ってことになったらしい、ご迷惑をおかけします。
「うーん、やっぱり家が沢山残っているところがいいかなぁ」
流石に結構な広さの中だと、いろんな場所がある。
その中でも、畑とか放牧地っぽいところが結構な割合を占めていることがわかった。
「やっぱりメインストリートを中心にってところかなぁ」
つまり集落の中心あたりを第1候補ってことにしておく。
まぁ、イベントの内容によっては何もないところでもいいかもだけど……
「さて、これで一周りかな?」
全部を見て回ったけど、ほんとにゴーストタウンって感じだなぁ。
「家が残っているのに誰もいないっていうのも凄いね」
家の中も見てみたけど、人が住んでいた形跡だけ残っていて中にはかなりの年月放置されていた場所もあった。
なかには部屋の中が落書きだらけで、まともな人が住んでいたとは思えないところも。
今、試しに入った家は比較的綺麗だけど、それでも人が住める感じじゃない。
「流石に家をそのまま使おうと思ったら危ないよね」
外見だけそのままにして内装はちゃんと整え直しかなぁ。
「ちょっとした旅行というイメージならばテントでもいいかもしれませんが」
「あー、それもありか……」
いや、でも嫌がる人もいるかもだし、最低限ちょっとしたコテージにできるくらいにはしておこう。
「ちなみに、飛鳥さんの能力を使うとどんな感じになるのですか?」
「えっ? あー、それじゃあ、試しにこの家だけでもやってみようか」
どのみち話し合いをする場所が必要だったから、そういう感じにしちゃおうかな。
「とりあえず、一旦外に出ようか」
連れ立って外へ出る。
「ちょっと離れててね」
皆を少し離して、僕は家の前に立つ。
そういえば、自分のスキルでダンジョン化なんて久しぶりだなぁ。
入口作ったりとかはしてたけど、最近はもっぱらダンジョン空間の中での作成だけだったし。
「よしっ、さくっとやっちゃおう」
眼の前に意識を集中。
ダンジョン化の範囲は……家の分だからこれくらい……使う魔力は……
頭の中で概算をしてイメージを固めていく。
おおよそ固まったところで、地面に手を置いた。
「……っ」
周りから魔素を吸収、それを自分の身体の中で魔力に変換して地面に流し込んでいくイメージ。
「光ってるよ!?」
「これは……本当にゲームみたいですね……」
「Is this Real!?」
後ろから驚く声が聞こえる。
まぁ、範囲を指定した部分がマスみたいに光っているからゲームっぽいのはわかるかな。
っと、こんなところか。
「久しぶりにやったけど、問題なくできたよ」
地面から手を離して振り返る。
「凄かった! 綺麗だった! だけど……」
「……別に見た目は変わらないのですね?」
なんか拍子抜けた感じ?
「まぁ、今のは単にダンジョン空間に指定しただけだからね、でも、例えばこんなこととか……」
家に手を向け……そうだ、どうせならびっくりさせてやろうか。
「……っ!」
できる限りの魔力を込めて放つ。
すると、家の上に巨大な魔法陣が現れた。
「一体何を!?」
「うわぁ! なんかダンジョンじゃなくて、現実で見ると凄い不思議な感覚だね!?」
「……Oh my God」
そして巨大な魔法陣からは大きな足が出てくる。
さらに、その足で支えるのには十分な巨体に長く伸びた首に頭、反対側には尻尾も生えている。
端的に言ってその姿は……
「「「ドラゴン!?」」」
ファンタジーで出てくるドラゴンの姿をしていた。
「ぐぉおおおおおおお!!!」
巨大な咆哮が辺りに響き渡る。
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