第32話 これからもよろしく

「それじゃあ、お疲れ様でした!」


「お疲れ様!」


「お疲れ様でした」


『お疲れ様です』


 イベント期間はあっという間に過ぎ去っていき、無事に今日で終了した。


「初のイベントだったけど、成功だったって言っていいんじゃないかな?」


「うん! 楽しかったよ!」


 あいも変わらず、毎日潜り続けていた雛香のお墨付きだ。

 どのくらい潜り続けていたかというと……


「結局雛香はモンスター討伐数で一位かぁ」


「すっごく頑張ったよ!」


 雛香はモンスター討伐数のランキングで一位になっていた。しかも、2位との差は100匹以上あるダントツのトップだ。


「結局最後まで魔導具の使い方は適当だったのに、ゴリ押しで討伐しまくってたもんなぁ」


 雛香のスタイルは結局、魔導具がある時は使うというスタイルのままだった。


「ボスまで倒してましたからね……」


 そうそう、雛香はそんなスタイルなのにボスまで倒していた。

 物理耐性もあるボスに対して、単なるフィジカルで挑むとは……

 連続攻撃で強化されるというギミックはあるけど、物理攻撃は対象外にしていたのが雛香の勝因だったかな?

 次は雛香対策用のモンスターとか……いや、個人を対象にそういうのはよくないか。

 まぁ、雛香に関しては好きにやらせておけばいいか。


「そう言えば、結局途中でボスのギミックは広がってっちゃったね」


「ええ、インターネットで拡散されていて以降はほとんどが撃破していました」


 本当のボスに関しては、結局3日目くらいで情報が広まってしまった。

 広まってしまえば、難しいものじゃないから、ほとんど全員が本当のボスを倒してクリアしていった。


「うーん、本当は自分で発見して欲しいんだけどなぁ」


「それは難しいのでは?」


 うーん、情報規制をかけるとか? いや、流石にそこまで縛るのはなぁ……


「3日はよくもったほうではないでしょうか? そのために日に日に報酬を下げるようにしたのでしょう?」


「うん、まぁ、そうだね」


 もちろん、そのうち情報が拡散されるのはわかっていたから、日毎にボス討伐報酬を下げていった。

 3日目になった時点では、報酬は1日目のものと比べるとかなり落ちている。

 つまり拡散される前に倒せた人たちはかなり美味しい思いをしていることになっている。


「1日目で倒せた人は結局Dさんだけだったしね」


 その中でも1日目で本来のボスを倒して報酬を手にしたのはDさんだけだった。

 結局あの後、Dさんはその日のうちに2回もボスを倒していたからそれだけでもかなりDPを手に入れている。


「アイテム獲得数という意味でも、Dさんは一位でしたからね」


「うん、かなりアイテム残してクリアしてたから、DPに変換したらもすごいことになってそう」


 総DP入手量なんてランキングもあったらきっとDさんが一位だっただろうね。

 ただ、今回はランキングにはなかったけど。


「お兄ちゃん、Dさんって誰?」


「うん? ああ、ちょっと面白い攻略してる人がいてな」


 そういえば、雛香はずっと潜ってたからDさんのことも知らないのか。


「ふーん……ねぇ、その人って女の人?」


「え、ああ、うん。そうだけど……」


 なんか雛香の目が怖いんだけど?


「女の人かぁ……」


「いや、あくまでも攻略が面白いから記憶に残っただけだぞ? 話したこともな……くはないけど」


「そっか……雛香の知らないところで、また女の子と仲良くしてたんだ……へぇ……」


「いや、別に仲良くは……」


 してない……うん、してないよ。あくまでもテスターの1人だっただけだ。


「まぁ、ヤンデレの振りはこのくらいにして……その人、どんな人なの?」


「えっ?」


 里楽さんがびっくりしてるけど、まぁ、雛香なりの冗談だよ? うん、冗談、冗談のはず。


「ああ、Dさんはだな、最初にテストプレイに参加してくれた人の1人で、今回のイベントで初めてボスをちゃんと倒した人だよ」


「へぇ! あの鎧に最初に勝ったんだ! じゃあ、強い人なんだね!」


 強い……強いのかな?


「ねぇねぇ、雛香とどっちが強い?」


「えっ、えっと……」


 もちろん、普通に戦えば雛香のが圧倒的に強いと思う。

 でも、


「……最初の頃は雛香が勝つけど、何回か戦ってパターン化した後はDさんが勝つかな」


 うん、そんなイメージ。


「えー……そんなぁ、ねぇねぇ、里楽さんもその人のこと知ってるんだよね? どう思う?」


「えっ? 私ですか?」


 こらこら、僕の答えが不満だったからって、里楽さんにまで聞くか。


「えっと……私も飛鳥さんと同じ印象ですね」


 おっ? 同じ印象だったか。反応に困って適当に合わせたわけじゃないよね?


「Dさんの様子を見ていましたが、観察眼を経験値に変えるのが非常に上手い方だと思いました。ああいうタイプの方は、やり込むと凄い結果を出すタイプかと」


 うん、なんか研究者みたいなタイプだよね?


「ふーん、二人がそこまで言うなんて……雛香も会ってみたいなぁ」


「あー、流石にそれはなぁ……」


 流石にこっちから声かけるのはちょっと無理かな。ダンジョン攻略だってこっちが勝手に見てただけだし。


「まぁ、そのうちプレイヤー同士で協力した攻略機能でも作ろうかな?」


 そうすれば出会えるかもしれないしね。


「複数人の攻略は面白そうですね……トラブルも多そうですが」


「まぁ、考えとくだけだけどね。というか……里楽さんは……」


「はい?」


「このまま手伝ってくれるってことでいいの?」


 イベントのために協力してもらって、そのイベントも終わったわけなんだけど。


「お邪魔でしたら遠慮しますが?」


「いやいや、むしろこっちとしてはありがたいから!」


 結局、僕以外の視点が入ることの重要性っていうのを今回で学んだ。

 里楽さんは色んなゲームをやりこんでるみたいで、そういう知識は非常に頼りになる。


「これからもよろしくお願いします」


「……はい、こちらこそ」


 うん、頼りになる仲間だ。


「雛香も! 雛香も頑張るよ!」


 うん、まぁ、雛香はプレイヤーの1人として攻略を楽しんでくれるのが一番いいかな?

 僕としても、雛香に楽しんでもらうっていうモチベーションでダンジョンを作れるしね。


「ともかく、2人共いやミミを合わせて3人共! これからもよろしく!」


「うん!」


「はい!」


『お任せください』


 これからも、僕はダンジョンを作っていく。そして、世界をもっと楽しくするんだ!

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