第17話
ダンジョンを公開してから数日が経った。
ダンジョンの評判はまずまずなようで、様々なニュースにも取り上げられている。
まぁ、そのほとんどが、
【新技術による新しい体験】や【ゲームで手に入れたアイテムが現実に使える!?】
なんてものだったけど……
僕としては、もうちょっとダンジョン自体にも注目してほしかったなぁ。
モンスターと戦ってダンジョンを攻略するっていうのは、それだけで面白いと思うんだけどなぁ。
まぁ、それでも、プレイヤーの変化数を見ている限り、ほとんどの人がダンジョンに2回以上は来ているようだし、毎日のようにダンジョンに潜っているという人も多い。
リピート率が高いっていうのは、楽しかったってことだと思う。
中には雛香のように1回でクリアした人もいるけど、そういう人ほど、ダンジョンにまた来ている率が高い。
クリアしたにも関わらず、もう1回入ろうとしてくれるのは、純粋に体験が楽しかった証拠だと思う。まぁ、DPを貯めてアイテムを交換するって目的も考えられるけど。
今のところ、DPで交換されたアイテムは初級ポーションだけだ。
そもそも今の段階だとそれしか交換対象じゃないからあたりまえではあるけど。
ちなみに、雛香にお願いして初級ポーションの効果を改めて確認してみたけど、現実だとちょっとした怪我が治るくらいだった。
切り傷、擦り傷が治るだけだから、効果としてはあんまり高くないと思うけど、いや、それでも一瞬で治るから便利ではあるのか。
でも、今後はもっと効果の高いポーションとかを出す予定なんだけど、今でさえこんなに騒ぎになっているのにどうなってしまうんだろうね。
まぁ、今はそれでいい。
僕のレベルも少しずつ上ってきているし、ダンジョンに配置できるアイテムは徐々に増やしていく予定だ。
DPを様々なものに変換できるようになればきっと少しずつ世界は変るはずだから。
とりあえず、今はこんなところで、スタートとしては成功したと言っていいと思う。
人数も徐々に増やして現在は10000人ほどに解放している。
この枠は、これからも増やしていくつもりだ。
レベルも上がっているから、次のダンジョンの計画も立て始めている。
ただ、ちょっと別の問題も発生していたりする。
新技術っていう名目でダンジョンに入る仕組みを紹介しているんだけど、その新技術に興味を持つ人が続出して、色々な企業から、問い合わせが来ている状態なんだよね。
当然、ダンジョンスキルのことなんて説明ができないので、無視するしかないんだけど、毎日のように今日は何件の問い合わせが来ているとミミから報告があるのでちょっとうんざりだ。
ほんと、ミミがいて助かったよ。これを自分で対処しようと思ったらめちゃくちゃ大変だったと思うよ。
中には、変な脅迫めいたものもあったりするらしいんだけど、一応僕の身元は今のところ完全に隠せているはず。
それに、いざとなればスキルを使った裏技みたいので、対処も考えていたりする。
まぁ、そんなことは起きないのが一番だけどね。
と、まぁ、問題はありつつも僕は普通の日常を過ごしていたのだが……
「うーん、どうしたもんかなぁ」
学生たる僕は帰りがてら、次のダンジョンについて考えていた。
「レベルが上がってできることが増えたからそれを盛り込みたい気も……そうなると……」
歩きスマホは危ないから、あくまでも頭の中で考えているけど、集中しているから注意力はおそろかになっていた。
そんな時、突然、目の前に人が立ちふさがった。
「あ、すみません」
ぶつかりそうになったので、僕はその人を避けようとしたけれど、その人はまた前に出てきた。
「……?」
顔を上げてみると、そこには、知らない女の子が立っていた。
僕と同じ歳くらいの女の子だ。淡い桃色の長い髪がとても綺麗で、ピッと背筋を伸ばした姿勢は見ているだけで美しいとも思える。
髪色がちょっと気になるけど、どこかの名家のお嬢様とかそういう印象だ。
そのお嬢様は明らかに僕のことを見ているんだけど、僕はその子には全く見覚えがない。
「何か用ですか?」
今、避けたはずなのに、また立ち塞がったってことは、僕に用があるのだと思ったんだけど。
「失礼、瓜生飛鳥さんで合ってますでしょうか?」
「はい? そうですけど、何か?」
間違いなく僕のことだ。やっぱり僕に用があるらしい。
「そうですか……」
その子は僕のことをまじまじと見て。
「申し訳ないですが、ついて来ていただけますか?」
「はぁ? えっと、どこにですか?」
「申し訳有りません、手荒なことはしたくありませんので、こちらの指示に従ってください」
えっと……これは、逆ナンとかじゃなくて……
「ひょっとして……誘拐?」
気がついたら、僕の後ろには、黒い服を着た男が立っている。
サングラスをかけていて、明らかにカタギの人間じゃない。
「こちらへどうぞ」
これ従わないと危ないやつだよね。
「はぁ……」
こんなことになるなら、雛香を待ってるんだったなぁ。
そんなことを考えながら、素直に指示に従った僕は、車に乗せられたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます