第13話

『よいしょおぉ!』


 早速攻略を始めた雛香は順調に進んでいく。


「流石に、戦闘は文句なしだなぁ」


 雛香用ダンジョンで戦闘を繰り返した慣れもあるだろうけど、かなり順調に進んでいる。

 ちなみに、攻略に関しては自力でやって欲しいため、マイクの音声は切ってこちらからの声は聞こえないようにしている。


「おっ? 隣の部屋に宝箱があるが……気がつくか?」


 ランダムで作成されたダンジョンをこちらは把握できているから、雛香がどうするかは見ものなんだが……


『宝箱!』


 無事に隣の部屋に行ってくれた。

 こういうダンジョンはよほど急ぎでも無い限りフロアを全部回るのが定石だ。そうしないと、宝箱を見逃してしまうこともあるからね。


『オープーン!』


 雛香は嬉しそうに宝箱を開けた。

 ちなみに、こちらはその中身も既にわかっている。


『おおー! 銅の剣だ!』


 宝箱の中身は、銅の剣。木の剣の純粋な強化版といったところだね。

 さて、それをどうするかな?


『これは使うしかないでしょ!』


 雛香は、木の剣をしまって、銅の剣を握りしめた。

 さてさて、これがゲームの世界だったら、普通に攻撃力が強化されただけなんだが、果たして?


『あっ! ゴブリン!』


 試し切りに見つけたのはゴブリンだ。

 早速、雛香は剣を振りかぶってゴブリンに切りかかったが……


『やっ! あれ?』


 雛香の剣は空を切った。


「そうなんだよなぁ、今まで軽い木の剣を使ってたところを銅の剣に持ち替えてすぐに使えるわけないんだよなぁ」


 その重さの違いに戸惑い、攻撃力があがったはずなのに、なぜか苦戦する事態になっている。


 それでも、相手は弱いゴブリンだ。時間はかかったが無事に倒すことができた。


『うーん?』


 ゴブリンを倒した後、雛香はその場で剣を振り回し始めた。


「こいつ何やってるんだ?」


 縦に、横に、斜めに、上段、中段、下段、あらゆるやりかたで剣を振り回す。


『うん、なるほど! なんとなく掴めたよ!』


 しばらくして、そうつぶやくと、雛香は再びダンジョンを進み始めた。


「まさか、もう掴んだのか?」


 そのまさかだった。

 再びゴブリンが現れたのだが、今度は剣を外すことなく、きっちり一撃でゴブリンを倒した。


「あいつ……ほんと、身体を動かすことにかけては天才的だよなぁ……」


 それにはもう僕も舌を巻くしかない。

 前世だったら勇者とかやっててもおかしくないレベルだ。

 とはいえ、今回のダンジョンは、そんなに簡単に終わるものではない。


『やった! 次の階だ!』


 次のフロアへの魔法陣を見つけた雛香はそこに入る。

 次で4階になる。

 そして、4階から出てくる魔物の種類が変わるのだ。


『あっ! 見たことないモンスター!』


 早速、新モンスターを雛香は発見する。

 雛香はそのモンスターに向かって、攻撃しようと近づくが……


『えっ!?』


 それよりも先にモンスターの方が攻撃をしかけてきた。

 その敵、ゴブリンアーチャーは、遠距離から弓で攻撃をしてきたのだ。

 つまり、雛香からすると射程の範囲外になる。


「この階からはそういう近接だけじゃないモンスターも出てくるぞ」


 さて、雛香はどうするか。


『ぐぬぬ、近づこうと思っても逃げる!』


 ゴブリンアーチャーは、雛香が近づくと逃げて、距離を取ったらまた攻撃をしてくる。やっかいな敵だぞ。


『むきー! 逃げるなぁ!』


 雛香は必死でゴブリンアーチャーを追いかけて、やっと角に追い詰めることに成功した。

 そうなってはもう、ゴブリンアーチャーは敵ではない。

 ゴブリンアーチャーを倒すことに成功した。


「しかし、HPはかなり削られたぞ?」


 これまでにゴブリンアーチャーに攻撃を受けて、HPはかなり減っている。

 もう一回、ゴブリンアーチャーが出てきたら厳しいところだが……


『宝箱!』


 隣の部屋で、雛香は宝箱を見つけた。


『中身は……怪しい薬……でも飲む!』


「運のいいやつめ」


 その宝箱の中身は、初級ポーションだ。これを使えば、減ったHPを回復することができる。

 というか、前にも一度見せただろうが。


『おおー! HPが回復した! これで戦えるね!』


 自分のHPが回復したことでやっとポーションだとわかったようだ。


 ともあれ、これで再び、ゴブリンアーチャーが出ても大丈夫になった。

 その上、


『また宝箱!』


 ゴブリンアーチャーに遭遇する前に、また宝箱を見つけた。


『これは、ナイフ? しかも沢山!』


 その宝箱の中身は、ナイフだ。

 しかも、ただのナイフではなく、投げる用のナイフとなっている。要するに使い捨てのナイフだ。


『これだけあれば、投げることもできそうだね!』


 雛香もそれにたどり着いたようだった。

 ちなみに、この投げナイフは敵に当たると消滅するから1本につき1回しか使えない。

 ただし、こっちが投げてくると相手も矢を撃ってくるけど……


『矢は切ればいいんだよ!』


 雛香は投げナイフを投げつつ、相手から来た矢を切るという、なかなかのテクニックを見せてくれた。

 矢を切る前に避ければいいんじゃないか?


 その他にも、攻撃力の高い、ゴブリンファイターや防御力の高いゴブリンガードも出てきたけれど、それも雛香は倒していく。

 その後、7階で再びモンスターテーブルが代わり、モンスターも強化されたが、単にステータスが上がっただけの敵など雛香の相手ではない。

 苦労することもなく、ついに10階にまで到達した。

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