第10話
「そんなわけで、雛香には僕のレベル上げをお願いしたいんだよ」
「了解! キャリーするよ!」
キャリーとはまた違くない?
まぁ、とりあえず、了承は取れたから……
「ひとまず、さっきのテスト用のダンジョンを攻略してみようか」
その攻略を見て、雛香用のダンジョンを作ればいいかな。
「了解! すぐにクリアしちゃうからね!」
そんなわけで、再び雛香はダンジョンへ向かった。
そして……
『ボス倒したよ!』
雛香がダンジョンをクリアした。
ダンジョンクリアにかかった時間は、Aさんよりも20分以上短い。圧倒的な速度と言っていいだろう。
「流石だなぁ……」
予想はしてたけど、それ以上に早かったなぁ。
「相変わらず、とんでもない身体能力だこと」
こいつの身体能力は、異常なくらい高い。
身体を使うことに関して、僕はこいつ以上の人間を見たことがない。
しかも、こいつが凄いのは、その身体能力をフルに使った戦闘ができるということだ。
ちょっと親の関係で、SPと模擬戦をしてたことがあったけど、その時も最初は負けていたのに最終的には勝っていた。
正真正銘の天才、いや言い方は悪いが怪物だと思う。
「ほんと、僕なんかよりもよっぽどチートだよなぁ」
少なくとも、僕なんか勝てる気がしない。
「ただいまー!」
考えているうちに、雛香がダンジョンから戻ってきた。
「うん? どうした?」
雛香を見ていると、何やら探すような動きをしていた。
「さっきの木の剣とかポーションとかなくなっちゃった?」
「ああ、ダンジョンの外に出ると、ダンジョン内で手に入れた物は消えるよ」
「えー、それじゃあ、次も最初からなの?」
「あくまでもテスト用のダンジョンだしね。本番だとちょっと変えるつもりだけど」
テスト用ダンジョンはあくまでも一時的なもののつもりだったからね。
「そうなんだ、ちょっと残念だなぁ」
「まぁ、雛香用に作るやつは本番用の仕組みを追加するから大丈夫だよ。ただ、普通には持ち出せないけどね」
「持ち出せないの?」
「そういうこと、流石に危ない物とかも拾うからな」
「なるほどね……あれ? でも、動画でポーションをもらってなかった?」
「……よく覚えてるな」
雛香にしては鋭い指摘だ。
「アプリのところを見て、持ち出しってやつがあるだろ? それを押せば持ち出せるよ。ただしDPと引き換えだ」
ダンジョン内で手に入れたアイテムは消えてしまったが、テスト用ダンジョンクリアの報酬として、ポーションが配布されている。
「DPって何?」
「DPはダンジョンポイントの略だな。ダンジョンでの活動をポイントに変えて貯めてるんだよ」
「うん? 敵を倒したら1DPとか?」
「まぁ、おおよそそんな感じだな。あとは、階層を進むとか、アイテムを拾うとか、色々なことでもポイントになるぞ」
ダンジョンでの活動をポイント化して、溜めることができるという仕組みだ。
「それを使うと、ダンジョンで拾ったアイテムを持ち出せるってこと?」
「そういうこと、ただ、基本的にはダンジョンから出た時に持っていたアイテムはDPに変換されるからな。保存しておくこともできるけど、それにもDPを使うぞ」
噛み砕いて説明すると、まず、何も持っていない状態でダンジョンに入る。
その中で、アイテムを拾ったりしながらダンジョンをクリアする。
その後、次の攻略を始めるまでの間でダンジョン内で拾ったアイテムを持ち越すかどうかを選ぶことができる。
ただし、全てのアイテムを自由に次の攻略に持ち込めるのではなく、DPを消費して選んだアイテムだけど次に持ち越せるわけだ。
それ以外のアイテムはDPに還元されるから良く考えて選ぶことが重要だね。
ちなみに、持ち越しじゃなくてDPを消費して現実に持ち出すこともできる。
こういうシステムにしたのはちょっとした理由がある。
というのも、流石にダンジョンで手に入れたアイテムを簡単に持ち出せてしまうと、現実への影響が大きすぎる。
今後ダンジョン内で武器とかを拾うことがあるかもしれない、けど、それを簡単に持ち出せてしまっては危険なのだ。
僕のダンジョンスキルが上がっていくと、それこそやばいアイテムとかも出すことができちゃうし……
というわけで、DPというポイント制にして、特定のアイテムだけを現実に持ち出せることにした。
基本的には、武器は全面禁止にするつもりだよ。
「ふーん? あ、雛香のDPが30になってる」
説明したんだけど、わかったんだか、わかってないんだか。雛香は自分のDPを確認している。
ちなみに、最低レベルの初級ポーションを持ち出すのにも100DPが必要だ。
まぁ、頑張って貯めてくれ。
「あ、ちなみにダンジョン内で負けるとDPは減るからな」
「大丈夫! 雛香は負けないから!」
さいですか……
「まぁ、それはそれとして、さっきのダンジョン攻略はどうだった?」
「うん、簡単だったぁ」
そりゃ、雛香レベルの人間からすると簡単だろうよ。
「一般人向けのダンジョンだからな」
そもそも、一般人は戦いとかしてない。雛香のような逸般人とは違うのだ。
「ただ、やっぱり、雛香専用のダンジョンを作るべきだろうなぁ」
この速度でダンジョンをクリアされてしまうと、僕に入ってくる経験値はそれほど高くない。
ダンジョンの難易度が最低レベルなのに加えて、その速度が早すぎるからだ。
雛香がクリアできるギリギリくらいの難易度のダンジョンを作る方が経験値効率がいい。
「雛香用! じゃあ、もっと敵が強くてもいいよ! なんだったらあのボスがザコ敵でもいいくらい」
集合スライムがザコ敵かぁ……
「うーん……」
「どうしたの?」
僕が悩んでいるのがわかったのか、雛香が尋ねてきた。
「いや、そうなると使える魔素を考えないといけないんだよなぁ」
レベル2の僕はまだまだ1つのダンジョンに使える魔素が限られている。
その魔素を配分して、作らないといけないんだが。
「あんまり強い敵を用意すると、他に分けることができなくなるんだよ」
「うん? どういうこと?」
「簡単に言うとだな……スライム一体を配置するのに1ポイントを使うとするだろ? で集合体スライムを配置するのには10ポイント。その他にもダンジョンの階層の深さだったり、アイテムだったり、色々なところにポイントを使うんだ。どう配置すればいいか頭を使うんだよ」
「なるほど?」
……わかってねぇなこいつ。
まぁ、簡単に言えば、難易度をあげつつ、雛香用のダンジョンを作るために、ポイントをどう配分していくかが重要ってことだ。
「簡単に難易度をあげるなら、強い敵を沢山配置するのが一番だけど、それだとアイテムだったり階層だったりが適当になるしなぁ……」
うーん、悩ましい……
「本当にこれでいいのか?」
「うん!」
雛香と話し合って、希望のダンジョンを作っていった。
そうして出来上がったのは……
「アイテムなしの1階層で1部屋のみの極狭ダンジョン。配置アイテムもなし。モンスターの強さは弱めだけど、敵の数がめちゃくちゃ多い」
という、僕からすると、これ楽しいのか? とも思えるダンジョンだった。
いや、難易度は結構高いから僕のレベル的には助かるけど。
「うん! 雛香は戦えれば満足だから!」
凄いなこいつ、テストの時のAさんよりもよっぽど戦闘民族じゃないか。
一応、敵を倒せばDPが手に入るけど、交換するアイテムも手に入らないし、個人的にはなんのために潜るかわからないダンジョンだが。
流石に無手だと無理なので、初期アイテムとして木の剣だけは手に入るようにしたけど。
「よーし! いっぱい敵を倒すよ!」
……ストレスでも溜まってるのかな。
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