第8話
改めてダンジョンを作ることを決めたわけだが……
「お兄ちゃん、学校行こう!」
それはそれとして、日常もおろそかにすることはできない。
これでも、現在15歳の高校生だからね。
雛香と二人で学校へ向かう。
「ふふっ、雛香たち知らない人から見たら恋人同士に見えるのかな?」
「いや、普通に兄妹だろ」
「えー、そうかなぁ。雛香たちあんまり似てないから、兄妹には見えないと思うなぁ」
僕たちの両親、母さんは日本人だが、父さんはアメリカ人だ。つまり、僕らはハーフということになる。
ただし、僕は母親似で、雛香は父親似。
雛香はその血が大きく出たのか、金色の髪に青い瞳を持っている。そんな見た目だから雛香は、外国人と間違われることもあるし、子供の頃は色々と問題もあった。まぁ、今はそういうこともないけど。
対して、僕は、髪も目も黒だから、純粋な日本人という感じ。昔の僕からすると、黒髪に黒目はちょっとカッコいい感じがして気に入ってたりする。
……確かに、僕たちはあんまり似ていないかも。
「いや、でも恋人はないだろ」
妹は、見た目も綺麗だし、性格も明るいから学校でも人気者だ。
それに引き換え僕は、自分で言うのもなんだが地味な存在だ。学校でも普通に友達はいるけれど、とてもじゃないが人気者とは程遠い。
並んでいても僕は影に隠れるだろう。
「お兄ちゃんも身綺麗にすればいいのに」
「いや、めんどくさいし」
そもそも、恋人とか興味ないし。今は、ダンジョンを作ることで頭がいっぱいだ。
「まぁ、雛香はお兄ちゃんを独占できるからいいけどね」
さいですか。
まぁ、そんな感じで今日も、学校へ登校した。
「それじゃあ、お兄ちゃん、またお昼に行くからね」
「ああ、ちゃんと勉強するんだぞ」
雛香とは別々のクラスなので、学校では別々に過ごすことになる。
「なぁ、飛鳥。見たか! 新技術でダンジョンの探検ができるってやつ!」
「ああ、見た見た」
席に着くと、友人が話しかけてきた。
話題は、雛香にも見せられた動画の話……つまるところ、僕のダンジョンの話だ。
「動画の話か! 俺も見たぞ!」
他の友人も加わって、その話で盛り上がった。
こんなところまで話題になるとやっぱり嬉しくなるね。
「うん? 飛鳥、なんかニヤニヤしてんなぁ」
「なんかエロいことでも考えてんのか? エロトラップダンジョン実装されねぇかなぁとか!」
「そりゃお前だろ」
まぁ、嬉しさが顔から滲みに出たらしく変な顔になっていたらしいが、あまり気にしないことにする。
いや、しかしエロトラップダンジョンか……ありか?
「いや、ねぇだろ」
流石に大半の女性を敵に回すようなことはしたくない。
少なくとも今考えるべきじゃないかな。
「なんだと! 俺に彼女ができるのがねぇってのか!」
「さすが、美形な妹持ちは言うことが違うねぇ」
「いや、そういう意味じゃなくて……」
まぁ、そんな感じで、友達と馬鹿話できるのも日常のうちだ。
「よってこの式の証明は……」
数学の授業中、僕は先生の言葉を聞き流していた。頭の中の雛香が 「雛香に勉強するようにって言ったのに!」 なんて怒っているが、数学は得意分野だ、今更ちょっと聞かなくても大丈夫だから許して欲しい。
それよりも今はダンジョンについて考えたい。
ひとまず、テストをしたことで、この世界でもダンジョンが受け入れられることはわかった。まぁ、思っていた以上に騒ぎになったけど、とりあえず、そこは置いておくとする。
となれば、話題が覚めないうちに、次の一手を打ちたいところだ。
ただ、前回のはあくまでもテストだから、そのまま使うことができない。あれはあくまでもテストだから不特定多数に公開するには問題が沢山ある。
とりあえず、その辺りをまとめるとでもしようか。
問題その1。ダンジョンが固定になっている。
前回のテスト用ダンジョンは、4人全員にまったく同じダンジョンを攻略してもらった。
次の回までの道筋や、モンスターの位置、宝箱の位置まで一緒で、違うところと言えばモンスターのドロップくらい? それも、落とすアイテムは1種類の固定だったし。
とてもじゃないけど、大勢にやってもらうにはつまらなすぎる。
今どきはネットの情報共有で、固定だってばれたら攻略も何もなくなってしまうからね。
求められるのは、毎回ダンジョンの内部が変わるくらいのランダム性だ。ランダムにすることで、潜る度に違うダンジョンを新鮮に楽しむことができる。
これは必須だろう。
問題その2。ダンジョンが2階しかない。
しかも、テスト用ダンジョンは、2階がまるごとボス部屋だったから、実質1階と言っても過言じゃない。
流石に1階層は短すぎて、すぐに終わってしまう。
せめて最低10階層くらいにはしておきたいかなぁ。
問題その3。手が足りない。
前回のテストの時は、僕がつきっきりで4人に説明、状態の監視なんかをしていたけれど、誰がいつダンジョンに入るかわからないし、その度に説明するのは物理的に無理がある。
予期せぬトラブルが起きた時に、対応しないといけない。
どう考えても僕一人じゃ無理だ。
とりあえず、問題としてはこんなところかな?
どれも結構大変な問題だなぁ……特に3がやばい。
人を増やすこととなると、その人に僕のダンジョンスキルのことを話さないといけない。そうなると信頼できる人じゃないといけないけど、そんな人はいないし。
しかし、他の問題もまるごと解決できる秘策がある。
それは、僕のダンジョンスキルのレベルを上げることだ。
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