このバッファローが自分フィールドに存在する場合、フィールドのカードを全て破壊する。

このカードは、フィールドの全てのカードを破壊する

　大人気カードゲーム『バトルモンスターズ・カードゲーム』——通称『バモカ』。

　好きなモンスターや特殊カードを組み合わせてキミだけの最強デッキを作れることでおなじみのそれは、上でも言っているのにもう一回言ってしまうほどにまで、世界中で大人気であった。

　発売開始から既に20年以上経過し、幾度かのぶっ壊れ性能カードたちによる環境の蹂躙とそれらの規制を経て、成熟したカードゲームとして名を馳せようとしていた。

　——そう、していた。

　それは突然現れた。

　始まりはSNS《シャベックス》内のバモカ公式アカウントの投稿だった。

　↓これである。↓

『新カード公開！

　その名も【デストロイ・バッファロー】！

　バトルポイント3000！

　強力！

　その壮絶効果は後日公開！」

　で、その3日後に公開された効果がこれであった。

「このカードが自分フィールドに存在する場合に発動できる。このカード以外の、フィールドのカードを全て破壊する。

この効果は相手ターンにもプレイできる。」

　ア、このカードゲーム終わったカモ。。。

　思わずそう思ったプレイヤー、数知れず。

　そもそもバモカは、場のモンスターがゼロになったプレイヤーに対して、モンスターで直接攻撃することで勝負に決着がつく。要はデストロイ・バッファローの効果を起動した時点でほぼ勝利が確定するのだ。ダメだろ。

　と言いたいところだが、甘いぞ読者！

　実はこのカードの登場前に、このようなカードが登場していた。

【黄泉違い〜ミスリーディング〜】

　分類：特殊カード

「条件：場のカードが墓地に行った際に、このカードを手札から捨てる。

　効果：自分、または相手の墓地に眠るモンスター1体を自分の場に呼び出す。」

　雑に使える蘇生カードなのだが、こちらも相手ターンに使用できる。出た時は「このゲームだと遅延カードだろ！」「テンポ悪化ゥア！」「せめて1回場に置く機会を与えてやれよ」などと散々な評価だったが、ここに来ていきなりほぼ唯一のメタカードとなった。

　基本的にバッファローが全てを破壊しながら相手プレイヤーに突き進む際にこのカードを使用、それにより自分の墓地に仕込んでおいたバッファローを蘇生、これにより自分のバッファローの破壊効果を起動させて返り討ちにするというテクニカルなプレイが可能になった。

　お気づきかもしれませんが、バッファローゲーと化しました。

　デストロイ・バッファローに対してデストロイ・バッファローを突進させるゲームが生まれてしまったわけですね。

　この結果どうなったかというと答えは明白。バモカ大会のデッキ分布円グラフが一色になってしまったわけですね。こうして環境はバッファローの群れによって破壊されてしまった。おのれバッファロー！

　とはいえ、バモカは20年以上の歴史を誇るカードゲーム。この程度では動じません。強すぎるカードに規制をかけ、デッキに投入できる枚数を減らすことができるのです(通常3枚。規制で1枚か0枚)。

　プレイヤーたちもバッファロー規制は仕方がないなぁ、などと思っていました。実際規制はかかりました。1枚しか入れられなくなりました。当然ですね。ただ、

次のブースターパックでたくさんの【バッファロー】を名称に含む新規カードが登場しました。それらはまあ別に異様に強いってほどではなかったのですが、1枚アカンカードが混ざっていました。

↓これです↓

【運命の突進〜デスティニー・突進〜】

　分類：特殊カード

「条件：場の『バッファロー』3体を墓地に送る。

　効果：場のカードを全て破壊する。

　　　　このカードは相手ターンにもプレイできる。」

　おバカ！　バモカ略してバカ！　終わりだよ終わり！　ばーかばーか！　これ相手ターンに使ったら盤面更地でそのまま次のターンで勝負決まるじゃん！　ばか！！！！！！！！

　と、誰しもが思っていたのだが、実はこのブースターパック、他にもカードを山札からサーチすることが発動条件のカード【サークラ・サークル】、カテゴリ名で名前が構成された【トマト・オア・ポテト】、お互いの山札を高確率で大方吹き飛ばす【黄泉飛ばし〜チャント・ヨクヨメ〜】、吹き飛ばした山札で新たにゲームを始める【黄泉かえし〜スタンド・リトライ】などなど、どいつもこいつも常軌を逸した強力効果のオンパレードであった。

　つまりは、デストロイ・バッファローの高いカードパワーをトリガーとして、バモカ全体のギアが1段階上がったということに他ならなかった。

　結果として、意外といい感じのバランスを維持したまま、デストロイ・バッファローですら環境に留まり続けたのだ。

　これがバッファロー事変。バモカ環境、その全てを破壊しながら突き進むバッファローの群れが起こした一部始終である。

　今では私もトップランカー。握るのはもちろんバッファローデッキ。

　なぜなら彼も、特別なカードだからです。

〜Happy End〜