第7章 世界に広がるケモミミ

閑話 集う者たち

 それらは、常ならば反目し合うような間柄であった。


 ひとつは神を拠り所とする終末の宗教。ひとつは自らが神となろうとする異端の科学。そして最後は世界に覇を唱えようとする国家。


 相容れぬそれらは、しかし共通の敵の存在によって、期せずして同じ方向を向いた。


「あれは神の敵だ。必ず排除しなければならない」


「なんでもいいが、体は渡してもらいますよ」


「都合の良い傀儡(かいらい)にできぬなら、お前たちの好きにすると良い」


 同じ方向を向いているとは言っても、協調性は皆無だ。あるのは、協力関係ではなく、単なる利害の一致。お互いを利用し合う、いびつな関係である。


「私たちは少し警戒され過ぎた。貴国の方から助力してもらえないか」


「我が国とて、まともと言える国交はない。活動の拠点を提供するだけで我慢してくれ」


「ここは私の出番ですか。彼女たちではありませんが、協力者が日本国外へ出てくるようです」


「ほう。そのような情報があるのか」


「研究者というのは、時に倫理が邪魔と感じるものです。そういう時に私のような者が便利になる。秘密裏に交流を持つ者もいるというわけです」


「信仰を持たないからそのような裏切りを許すことになる。まあ、今回はそれが役に立った」


「日本国外ならやりようはある」


「目的地は世界冒険者協会本部のオリンポスです」


「あの海亀か。今の停留地は地中海だったか」


「おお。それならば私たちの聖地が近い。力になれるだろう」


「聖地と言ってもモンスターがいるだけでしょう? どうやって力になると?」


「……今の侮辱は聞かなかったことにする。もちろん信仰の力だ」


「これだから宗教は……」


「物資はこちらが準備しておく。どうでも良いが、仲間内で争って無駄に消耗するなよ」


「信者でないなら仲間ではない」


「……」

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