第5章 進撃のケモ?ミミ?

閑話 ダンジョンコア

 ダンジョンの最奥には、巨大な魔石〈ダンジョンコア〉が鎮座している。


〈ダンジョンコア〉に触れると、〈ダンジョンコア〉を回収するか、ダンジョンを脱出するかの選択肢が脳裏に浮かび上がる。通常ならば、脱出一択だ。


〈ダンジョンコア〉を回収すると、ダンジョンは緩やかに消失へと向かう。内部のモンスターはリポップを止め、最奥部から徐々に崩壊していく。そうして崩壊が〈門〉へと達すると、跡形もなく消え去る。


 このとき、一定時間内に〈ダンジョンコア〉を元に戻せれば、ダンジョンの崩壊は停止する。タイムリミットはおよそ48時間。


 それが間に合わずダンジョンが崩壊してしまった場合でも、ダンジョンの数自体は変化しない。消失した〈門〉は、またどこかへと現れ、新たなダンジョンとなる。


 人口とダンジョンの出現数は正の相関があると予想されており、〈門〉が消失したとしても、また付近に再出現することがほとんどだ。


 例外は、〈ダンジョンブレイク〉などで著しく人口が変化した場合など。ぽっかりと無人地帯が出来上がり、その付近には新たなダンジョンは生まれない。


 また、新たなダンジョンのダンジョンランクは、消失したダンジョンランクに関わらず、完全にランダムに決定される。


 Eランクのダンジョンが消失したからと言って、新しいダンジョンがEランクとは限らない。


 これがどういう事態を招くかというと、簡単に攻略できるFランクやEランクばかり消失させていけば、そのうち攻略が困難なAランクやBランクばかりになるということだ。


 故に、〈ダンジョンコア〉の回収、つまりダンジョンの消失は厳しく制限され、無許可での〈ダンジョンコア〉の回収は厳罰に処される。


「4班から報告です! ダンジョンコアの奪還に成功、これからダンジョンへ向かうとのことです!」


「了解した。護衛として予備部隊も向かわせてくれ。ふぅ、これで4つ目か。残りは8時間弱、間に合うか……」


「最後の1つを5班が捜索中です。2班と3班はもう間もなくダンジョン最奥に到着するでしょう」


「そうか。……審判教め」


 9月の終わり、冒険者協会に緊急の報告がなされた。


 全国のF、Eランクダンジョン5か所で、同時刻に〈ダンジョンコア〉が違法に回収されたというものだ。


 すでに奪還を完了した隊員からの報告で、ダンジョン審判教の関与が確認された。スタンピードの際にも関与があった宗教組織――否、〈ダンジョンブレイク〉をもくろむ国際テロ組織だ。


 回収された〈ダンジョンコア〉のうち4つは奪還が成功し、ダンジョンにコアを戻すこともできるだろう。


 問題は残り1個。


 関東局エリアで回収されたコアは、まだ行方が分からず、ダンジョン崩壊までのタイムリミットは8時間を切った。


 巨大な魔石でもある〈ダンジョンコア〉は、〈マジックアイテム〉の探知技術を応用して、ある程度の位置を把握することができる。しかし、関東局エリアには、〈ダンジョンコア〉を利用した施設がいくつかある。


 これが災いし、違法に回収された〈ダンジョンコア〉の正確な位置が掴めないでいた。探知するための設備も、容易に持ち運べるようなものではない。


 刻々と時間だけが過ぎていく。

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