第21話 生中継するなら出演で

【まえがき】

 何らかの秘密のデータです。

 身長:茜>玉藻=愛里>>>明=彩華

 お胸様:彩華>玉藻=茜>愛里>>明

 むっちり:玉藻=茜>愛里=彩華>明


――――――――――――――――――――


「き、ききき、きんっ、ちょうしまし、たっ」


 冒険者協会とのWeb会議が終わった後、茜ちゃんが私の膝の上から崩れ落ちそうになった。危ないよ。


「ほれ、しゃっきりせんか」


「あ、ありがと、う、ございますっ。玉藻さん」


 言葉とは裏腹に、くっつき虫になった茜ちゃんを抱えてリビングへ。こうなるとしばらくはそのままだ。アーマードレスを着替えた後も、やはり戻ってきてくっつき虫になった。


 ちょうど良いので、冒険者協会の生中継にどうやって出演するか、皆と相談しよう。あ、そもそも出演するかどうかの確認からか。


「はい! さっきも言いましたが、私は出たいです!」


「ボクも賛成です。『マヨヒガ』の地位を確立するためには良い手です」


「わ、わたしは、皆さんに、ついて、いきますっ」


「ということは、出演するということで決まりだね」


 問題は、どういう風に出演するかだ。


「映像出演が無難でしょう」


 彩華ちゃんの言う通りだ。無難に成果を求めるなら、Web会議のようにすれば良い。ただそれだけだと面白みがない。あとインパクトもない。


 その反面、安全ではある。ネットのセキュリティは、彩華ちゃんのおかげで万全だ。


「現地に行きましょう!」


 愛里ちゃんの提案は、インパクト重視。メリットとデメリットは、映像出演の時と真逆で、一番の問題点は、私たちの身元がバレるリスクが大きい点だ。


 逆にインパクトは計り知れない。ついでに、対応する冒険者協会職員の胃痛も計り知れない。強く生きて。


「どっちにも利点はあるね」


「現地に行く案は危険すぎます。私たちの力を合わせても完璧な偽装は不可能です」


 そうなのだ。いかに私たちが転生特典スキルを持っていたとしても、ちょっと厳しい。じゃあ諦めるのかと言われたら、そんな訳はない。


 無理なら、できるようになればいいんだ。


「そのために、特訓だよ」




「んぎぎぎ! んぬー!」


「二重反転循環じゃ足りないです。二重の3乗、八重反転! さらに循環に廻転を加えて、どうだー!」


「もう一度良く見せてください。次は〈魔力見える君4号〉で見てみます。表層だけでなく、深層魔力の流れを追って……。こうでしょうか」


「にゃ、皆できてないにゃ。獣姿になれてないにゃ」


 今やっているのは、獣化の特訓だ。


 前にも言ったように、完全な獣化は茜ちゃんしか成功していない。だが、成功例が目の前にいるのなら、私たちにだってできるはず。


 足りないのは? そう、気合だ!


「ふぬー! ふはぁっ! ダメだ……」


 くっ、まだ気合が足りないか。もう一度チャレンジする前に、茜ちゃんの見本を見ておきたい。


「茜ちゃん、もう一回教えて」


「分かったにゃ。皆も良く見るにゃ」


「はい!」


「少し待ってください。はい、準備できました」


 彩華ちゃんが新たなモノクル型〈マジックアイテム〉を取り出した。見える君5号だ。


「耳と尻尾を消すときと違って、力はいらにゃいにゃ。こう、ふわふわーにゃわたあめみたいにゃ感じにゃ」


 わたあめみたいな感じ……、抽象的過ぎて難しい。気合でグッと固めたらダメなところが余計に難しい。


「それでふわふわーが最高潮に達したら、体の奥からみゅみゅーとにゃーだにゃ!」


「みゅみゅーとにゃー……」


 首をかしげながら愛里ちゃんが繰り返した。やっぱり分かりにくいよね。


「これは……、つかめたかもしれません」


「彩華ちゃん! 本当!?」


 でかした彩華ちゃん! どういうことか説明をお願いします。


「深層で術式と肉体がつながったままなのです。つまり、循環や廻転ではなく回帰。これがポイントです」


「なるほど!」


 な、なるほど? 理解できたの愛里ちゃん?


「と言うことは……、むんっ!」


 ピカッと愛里ちゃんの体が光ると、体が縮み始め、一瞬で犬の姿に変身した。


「できました!」


「すごいにゃ! やったにゃ!」


「わんわん!」


 ソファーの上で、愛里ちゃん(犬)と茜ちゃん(猫)がじゃれあっている。可愛いね。


「ボクもやってみます。……んっ! できました!」


 彩華ちゃんの体も縮み、身長60センチくらいの熊ちゃんに変身した。がおーポーズだ。


「彩華ちゃん小っちゃくて可愛い!」


「大きいと目立ちますから、小さくて良かったです」


「にゃあ! 彩華ちゃんもすごいにゃ!」


 座り込んだ彩華ちゃん(熊)に飛び掛かる愛里ちゃん(犬)と茜ちゃん(猫)! なんだこのもふもふパラダイスは!


 くぅ、私もあそこに混ざりたい! いや、混ざる! ここで出来なくていつ出来るのか! 行くぞー!


「ふぬーー!!!」


「わん!?」


「にゃ!?」


「きゃ!?」


 私の体が光り輝いている。これは成功したか!? あと彩華ちゃんは「べあ!?」とか言わないんだね。


「どう? できた?」


「狐になってますよ、明さん!」


「完璧です」


「にゃあ!」


 やっぱり気合、これでもふもふパラダイスの完成だ! ――ああ、違った。目的はそうじゃなかった。これは、私たちが生中継に出演するための策の1つなのだ。

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