第28話 解決したなら打ち上げで

「うおおお! やったぞー!!」


「お狐様最高っ!!」


「スタンピードは終わったー!!」


「うむ。皆のもの良くやった」


「「「うおおおぉ!!」」」


「玉藻さん、こっちも終わったっス!」


 愛里ちゃんの方も片付いたようで、リューちゃんに乗ってこっちに合流してきた。


「あ、ついでに落ちてるドロップアイテムもまとめちゃうっス」


 スタンピードでぐちゃぐちゃになった地面から、ドロップアイテムを拾うのはかなり面倒くさそうだった。そのまま放置するのももったいないなぁと思っていたので、とてもありがたい。


「それではあの女子(おなご)に話だけして帰るかの」


「そうっスね。あとモンスターの群れの中にダンジョン審判教の人がいたんで捕獲済みっス」


「ほう、大活躍ではないか」


「えへへ、あたいの魔法は使い勝手が良いっスからね!」


 ココとリューちゃんで一っ飛びし、理恵さんの元へ。追加のダンジョン審判教入りまーす。


「あなたたちには、お礼を言うべきね。私は冒険者協会の後藤理恵、今回の救援に感謝します」


「良い良い。たまたま近くにおったで、手助けしたまでじゃ」


「そうっスよ。旅は道連れ世は情けって言うじゃないっスか」


「それで……、もし良かったら、あなたたちの名前を教えてくれないかしら」


 おっ、情報取集ですね、わかります。ミステリアスな美少女の情報が少しでもほしいんだろう。理恵さん相手だからね、普通に教えちゃうよ。


「妾の名前は、玉藻の前じゃ」


「あたいは真神っス!」


「改めて、玉藻の前さん、真神さん、救援感謝します」


 もっと聞きたいことがあるけど、聞いても良いか迷ってる顔をしているね。でも情報は小出しにさせてもらおう。今日はここまで! 今回の情報でまたいろいろと考察してほしい。


「それでは妾たちは行くとしよう。後藤理恵よ励むのじゃぞ」


「また会えたら良いっスね! それじゃあバイバイっス!」


――コヤーン!

――ギュオオオン!


 ココとリューちゃんに乗って私たちは上空へ駆けあがる。ある程度行ったら愛里ちゃんの〈水魔法〉で偽装してもらって、皆の所へ戻らなきゃね。


 あとどうでもいいけど、リューちゃんって「ギュオオオン」って鳴くんだ。ワイルドだね。




 スタンピードから3日がたった。


 あの後、パーティーの皆と合流したんだけど、途中から姿が見えなくなってたことで、すごい心配されてしまった。言い訳として、リューちゃんがエルダーリッチを倒すために地面に衝突した衝撃で、反対側に飛ばされて、そこで戦ってた、ということにしてある。


 愛里ちゃんが気を利かせて、私や愛里ちゃんっぽい水人形を適当に動かしてくれていたので、証拠もバッチリ。


 いや愛里ちゃんすごいね。乗ってたリューちゃんに、囲い込みのリューちゃん3体、水人形2体にっていくつ魔法を使ってるの。水人形は動きが結構テキトー? それでもすごいからね。


「スタンピード阻止、お疲れさまー! カンパーイ!」


「「「カンパーイ!」」」


 ということで、3日後になってしまったが、臨時パーティーの皆、愛里ちゃん、そして理恵さんの6人でお疲れ様パーティーだ。


 ちなみに焼肉に来ております。冒険者は体が資本だからね。


「それにしても、皆さんが無事で本当に良かったです」


「そうね。途中で明さんと愛里ちゃんははぐれちゃうし、悠は泣きそうになるし、大変だったわ」


「な、泣いてないからね! 僕は明さんたちなら大丈夫って信じてたから!」


 悠ちゃんはこう言っているが、合流した時はバッチリ泣いていた。気が抜けてへたり込んだ悠ちゃんを皆で慰めたんだよね。


「本当に良かったわ。今回のスタンピードはアレのせいか普通とは違ってたからね。あの2人……、人?、まあいいわ、あの2人のおかげってのが大きいでしょうね」


 アレっていうのは、『ダンジョン審判教』のことだ。ニュースでも大々的に取り上げられ、世界中で話題になっている。


「玉藻の前さんに真神さんでしたか。とても人間とは思えない強さでした」


「耳と尻尾が付いているものね。アクセサリーか何かだと思ってたけど、実際に目にすると、偽物とは思えないわ」


「すごい綺麗でしたよね」


「へえ、悠はああいう人がタイプなの?」


「いやっ、玉藻の前さんの毛並みが綺麗って言っただけで、僕は別にっ」


 あらあら。悠ちゃんのハートをキャッチしちゃったかな。むふ、ミステリアスな玉藻の前、なんて罪深いんだ。


「真神さんの毛並みも綺麗でしたよ!」


「ん、愛里ちゃん落ち着いて」


 競ってどうするの。でも、ミステリアスさが自然と溢れ出ちゃったかなぁ。ブラッシングも欠かしてないし? 艶々で絹のように滑らかだし?


「私は真神さんの煌めくような毛色が好きですね。男装したらきっとすごい似合うと思います」


「しおりちゃんは真神さん派ね」


「玉藻の前の金色の毛色も高貴でいいと思う」


「明さん、落ち着いて!」


 金色は豊穣の色でもある。つまり豊かさを表しているんだ。玉藻の前の毛色も負けてないぞ!


「ニュースでも人気よね。冒険者協会の私の所まで取材に来たわよ」


「〈亡霊〉ダンジョンも、すごい人が集まっているみたいですね」


「そうよぉ。立ち入り禁止だって言っても、どんどん集まってきて、現場の人は大変だって言ってたわ」


 スタンピードやダンジョン審判教の衝撃を塗りつぶす勢いで、玉藻の前と真神の情報は拡散していっている。特に日本では。


「話は変わるけど、明ちゃんは愛里ちゃんとパーティーを組むんだって?」


「はい。そうすることにしました」


「はいっ!」


「本当は5人でパーティー組んでくれたらなぁって思ったんだけど、こればっかりは本人次第だからね。応援するわ」


「ありがとう」


「ありがとうございます!」


 予定通り、私は臨時パーティーを抜けて愛里ちゃんとパーティーを組む。残った臨時パーティーメンバーは3人で別パーティーだ。秘密が多いので、こればっかりはしょうがない。


 お疲れ様パーティーを終えて帰り道。


「パーティー楽しかったね」


「そうですね! ダンジョンの方もお疲れ様の方も楽しかったです!」


「早く強くなって、魔法を隠さなくてもいいくらいになろう」


「あんまり早すぎるのもどうかと思いますけど……。目標は大きい方がいいですよね!」


「ん、そう。Aランク冒険者になれば、魔法も使い放題」


「リューちゃんは正体がバレそうだから、別の魔法も考えておかないと」


 私の場合は、〈火魔法〉と〈狐火魔法〉で見た目に結構違いがあるから、狐を作ったとしても、玉藻の前のファンなんです!で、押し通せる気がする。


「そういえば、私たちのパーティーって名前は何ていうんですか?」


「名前?」


「もしかして決めてないんですか!?」


 え、そんなに衝撃を受けるところ?


「名前が一番重要ですよ!」


 まあ、魔法に『水景・大瀑布』なんて名前を付ける愛里ちゃんからすると、重要なのかも。でも一番って少し大げさ。


「それじゃあ、愛里ちゃんが決めて」


「いいんですか! 実は、温めていた名前があったんです!」


 さすが愛里ちゃんだ。しっかりと案を持っていた。発表をお願いします!


「『マヨヒガ』。現代ファンタジーの世界に迷い込んだ私たちに、ぴったりの名前じゃないですか?」


――――――――――――――――――――

2024/04/01 玉藻の前の一人称を「妾」に変更


――――――――――――――――――――

【あとがき】

これにて2章終了です。

この後、「掲示板回」2つと「登場人物紹介」を挟んで3章となります。

3章もよろしくお願いします。

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