レイカ隊長、月面でバッファローと戦う。
touhu・kinugosi
ルナハント
身長約170センチ、金髪碧眼、豊かな胸部装甲を誇る、二十代前半の美人女性パイロット、”レイカ・バレイショ―”中尉には、三分以内にやらなければならないことがあった。
全高7メートル。
武骨な一つ目タイプのカメラを備えた頭部。
頭部にはアンテナブレードが一本角のように立っていた。
ずんぐりとした上半身に、収納式の車輪を備えた四本足。
胸部には隊長機をあらわす、”701"の文字。
天井や壁に小さなレバーが生えた狭いコックピット。
レイカの前には四角いモニターが正面と左右斜めに二枚。
土と岩だけの月面の光景。
背後には、約2万人が暮らす、半球状の
ふにゃり
六点ハーネス式のシートベルトが豊かな胸部装甲に埋まる。
正面に土煙が見える。
どんどん近づいてくるようだ。
「こちら02、到達まで約三分っ」
斥候に出した二番機からの報告だ。
「03、
四角い砲身を持つ巨大な大砲が月の大地に設置された。
三本の太い支脚が斜め三方に広がる。
パリリ
砲身内部に青白いスパークが走る。
「隊長、弾種の指示をっ」
03が聞いた。
「司令部っ、屠殺許可をっ」
レイカが無線で叫んだ。
土煙はもう目の前まで迫っていた。
「牧場主から許可が出ない、生け捕りにせよ」
司令部からの返事が来た。
「くっ、屠殺許可は出ないのか、弾種、スタンネット、自機の武装もスタンに変更っ」
「「イエス、マムッ」」
ガコン
03が、
土煙の正体。
それは、すべてを破壊しながら突き進むバッファローの群れである。
しかもただのバッファローではない。(←当然だ、ここは、空気無し、重力は地球の六分の一の月面上なのである)
極悪環境下に適応するために遺伝子改造された、月面下でも生息可能な、”ルナバッファロー”の群れなのであるっ。
近くにある、”月面バッファロー牧場”から逃げてきたのだっ。
月の重力に合わせて大きさは地球のものの三倍っ、である。(←六倍と言いたいがデカすぎですね)
レイカのモニターに、巨大な角をふりかざし目を血走らせたバッファローの顔が映る。
「スタンネット、発射」
パッ
青白い閃光と共に円筒の砲弾が砲身から飛び出る。
空気があるのならば、「ブモオオオオ」と泣いているであろうバッファローの鼻先にネットが広がった。
バッファローの群れを包んでスパーク。
ネットに、包まれた、もしくは触れたバッファローがバタバタと倒れた。
「三頭抜けた、止めるぞ」
全高7メートルのワーカーよりも大きなバッファローだ。
基地の外郭が破壊されるだろう。
「「イエス、マムッ」」
03が、すかさず左手のシールドの裏からスタンロッドを取り出し、一頭の頭を殴る。
足がもつれながらしばらく走り倒れた。
パパパ
レイカの持つ、L85アサルトライフルから閃光が三つ。
電磁スタン弾だ。
「おっと」
マガジンが勝手に抜けた。
命中、もう一頭倒れる。
「02ッ」
「イエスッ」
ヒュン
レイカの横を青白い塊が走り抜けた。
「ヒットッ」
残りの一頭に命中。
外郭に当たる寸前でスタンして倒れた。
02がスナイパーライフルのコッキングレバーを操作。
薬室から薬莢が飛び出る。
「ご苦労、デューク、カイト、状況終了。 帰投する」
「「イエス、マアム」」
「あ、レイカ隊長、今度食事でもどうですか?」
「ふっ、カイトか、私を口説くならもっとムードの良い所でやれ」
四本の足の先の車輪から土煙を上げて走る
折りたたまれた
倒れたバッファローを避けた。
「……次の土曜なら空いているぞ」
「イエスッ、マアムッ、くっ、やったぜ」
「HAHAHA、よかったな、カイト」
「ああっ」
ちなみにデュークは妻子持ちである。
気絶したバッファローたちは、牧場の十八輪巨大トレーラーに回収された。
へどろのようにどす黒く染まった地球が月の大地の向こうに浮かんでいる。
土曜日のレイカとカイトのデートがうまくいったかは、公式の記録に残っていない。
レイカ隊長、月面でバッファローと戦う。 touhu・kinugosi @touhukinugosi
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