三分で想いを伝えるには
凪風ゆられ
告白
僕には三分以内にやらなければならないことがあった。
それは告白である。
なぜ時間制限が設けられてるって?
そりゃもちろん好きな子に「三分以内で終わらせて」と言われたからだ。
一般的に考えてみれば異性への告白だなんて、そう時間のかかるものではないだろう。僕だって初めはそう思ってた。
しかし現実はどうだ。
溢れんばかりのこの想いッ! 鳴りやまない鼓動ッ! 弾けんばかりの緊張ッ!
僕は今世界の命運を託されていると言っても過言ではないのだ。
ならばどうする自分よ。
好きな人の要望は叶えるのは当然だが、あまりにも簡略化しすぎて伝わらなかったなんて事態は絶対に避けなければならない。
──残り二分。
僕はこの瞬間に至るまで彼女と一緒に居られるよう様々なアクションを起こした。
毎日迷惑にはならないように話し掛けた。
偶然を装って彼女の手伝いなどをした。
勉強で分からないところを教えて貰ったりした。
傘を忘れた日には僕の傘で一緒に帰ったりもした。
他にも数えきれないくらいのことが──あれ、なんか変なの混じってない?
まぁ全部大切な思い出なのでヨシ!
とにかく、それらの行為が報われたのか彼女の連絡先を入手することに成功し、
さらには下校も時々一緒にするようになった。
──残り一分
全てを言葉にすることはできない。
しかし言葉を使わなければ想いは伝わらない。
であるならば選択肢はたった一つ。
「好きです。僕と付き合ってください」
たった十五文字。されど十五文字。
いくら想いを声にして乗せたところで、それは結局自分だけものでしかないのだ。
僕は目の前にいる子を困らせたいわけじゃない。
純粋な気持ちを伝えるなら、これだけでいい。
ほんの少しだけの間を置いて彼女はおもむろに口を開いた。
「はい。喜んで」
あまりにも短く単純な言葉に対して僕は咄嗟に、
「ふ、不束者ですがよ、よろしくお願いします!」
と変なことを言ってしまった。
いやそれは違うだろ! もっとかっこいい言葉を言えよ!
恥ずかしさを感じながらも、なんとか醜態をもみ消そうと慌てていると、彼女は小さく笑う。
「これはこれはご丁寧に。こちらこそよろしくお願いしますね」
初めて笑う姿を見たかも。
滅多に見られないレアシーンに感動していると彼女は一気に距離を詰めてきた。
「それじゃあさ、私の好きなところ十個教えてよ。三分以内に」
三分で想いを伝えるには 凪風ゆられ @yugara24
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます