男の娘の僕がバ美肉でVTuberデビューしたら、いつの間にかハーレム築いてた件
黒兎しろ
第1話 ハジマリの始まり
誰かに認められたい。見て欲しい。注目を浴びたい。
僕は、心の中でこういう誰にでもある承認欲求を呟いてしまった。
自分のコンプレックスも、自分の何もかも、全て、誰かに認めて欲しくて、安心したかったのかもしれない……
これこそが、優柔不断な僕を突き動かし、こうしていることへの動因となっていた。
僕は、駅のトイレにいた。
駅の男子トイレの狭く、閉ざされた窮屈な空間だ。そこから出て、駅の改札を抜けると、やっと新鮮な空気を肺へと取り込むことが出来た。
だけど、どうやらそれは長くは続かないようだった。都会の街中に出れば、多くの人の視線。特に男性の視線が僕を突き刺した。
呼吸が浅くなり、汗が滲み出てくるような感覚を覚える。
僕にその視線を寄越してくる人々は、皆、僕の派手で奇抜な格好に注目していたことだろう。
僕は、白とピンクを基調とした服を着ていた。下はスカートだった。
今まさに僕は、新しい経験をしていた。
僕の名前は、
今は、間違われることは少なくなった。声変わりもしたし、体つきも良くなった、髪型もなるべく短くしたし、男っぽい服装をあえて選んだ。そうして、やっと、男と見られるようになった。
でも、僕としては、周りの目を気にして、社会というしがらみの上で、仕方なくやっていたことだった。
僕に勇気があれば、そのしがらみを取っ払うような性格であればと何度となく思った。
幼稚園か小学校低学年の頃だろうか。女きょうだいの間に生まれた僕は、昔から三姉妹に見られることが多かったし、父親が単身赴任の環境で過ごしてたから、女性よりの考えに近くなっていたのかもしれない。僕は、女の子に憧れを持ち始め、僕もかわいく着飾ってその輪の中に入ってみたいと思い始めた。幼い頃、母親と姉と妹と共に、よくショッピングモールに出かけていたが母親と姉達が色々なかわいい服やアクセサリーを選んでいる所をずっと見ていた。女の子のキラキラとした可愛い服やアクセサリーを身につけて輝きたいといつしか思っていたのだ。
そんな思いを抱えたまま、僕は大人の第一歩を踏み始めるとともに、新たな世界へも踏み始めた。
そう、女装を始めたのだ。
こうして、今、僕は、女の子の格好をしながら歩いている。
それだけで自分のあらゆる欲求が満たされるような気がした。
しかし、僕は周りの視線を意識しすぎて、またもやトイレへ籠ってしまった。
「はぁ……やっぱりダメだ、恥ずかしすぎる」
どうしても羞恥心が拭いきれていなかったのだ。それと、もし男ってバレてたらなんて考える臆病さもあったかもしれない。
結局、その日は、女装をやめて元の格好に戻り、そそくさと街中から帰ってきてしまった。
◇
「どうやったら、僕も可愛い女の子みたいに自己表現できるのかな」
僕は自分の部屋に籠って一人でそう呟いた。
答えは単純明快で、恥ずかしがらずに勇気を出すことなんだけど、今の僕にそれは出来ないからなにか他の手段が欲しかった。
こんな臆病な僕が、19歳に、専門学校生になってから、女装を始めようと思ったのは、単純に暇な時間が増えたことと、過去のトラウマが薄れてきたこと、そして、SNSで同じような仲間がいることを知れたことからだった。
ここ最近、SNSで女装や男装を楽しむ人たちの交流、オフイベントがあることを知った。
その人たちの写真を見ると、みんな自分らしく、輝いていた。
それに勇気を貰い、僕は女装を始めようと、決心できたのだ。
まぁ、途中で帰ってきてしまったけれど。
とりあえず、挑戦は出来たから良しとはしたい。次、またやるかは僕の底を尽きた勇気次第だ。それよりも、他の手段として、一つ心当たりがあった。
◇
翌日、僕はいつも通り専門学校へと向かった。
僕の通う専門学校は、芸能面に特化した特殊な専門学校だった。珍しいもので言えば、芸人やタレントになるコースや、YoTuberやVTuber、ゲーム実況者になるYoTuberコースだ。その他には、声優、イラストレーター、小説、音楽、プログラマーなど幅広い。
僕は、イラストレーターコースの一年生だった。イラストレーターを選んだ理由は単純で、昔から絵が好きでよく書いていたからだ。好きこそ物の上手なれというが、SNSで自分の描いた絵を載せてみると思った以上にいい反応がたくさん貰えて、もっと上手くなりたいと思った。
専門学校の授業は、絵のプロの講師から色んな技術を教わる座学や実際に自由に描く実践がある。
知らないことも知れたり、同じ志を持つ仲間と交流をもてたりするのは楽しかった。
僕は授業後、そのまま帰るのではなく、他のコースの教室を見学するのが日課になっていた。
この専門学校は、規則が緩いのか、誰でも違うコースの授業が見学できるようになっている。
僕は最近、VTuberコースの授業を見学するようになっていた。
昨今のVTuber人気は凄まじく、年々VTuberの数は右肩上がりである。その中で売れるVTuberになるには、ひと握り、いや一粒程の限られた人だけだ。その一人になるために、最近ではVTuberになるための養成所や学校が増えている、、らしい。YoTubeで知った。
僕も、VTuberになってみたい気持ちはあった。
VTuberは、女装をしなくとも、見た目なんて関係なしに、バーチャルで誰でも可愛い女の子になれるからだ。
所謂、バ美肉というやつである。
今ではAIの発展により、たとえ男の人の声であっても、音声を加工し、可愛い女の子の声を出力できるらしい。
「ねえねえ、君もVTuberに興味ある感じ?」
僕の隣から聞こえた声は、透き通るような
川のせせらぎのような声色だった。
その声は僕に向けられたものだと脳が理解するのに時間を要した。
「う、うん」
「そうなんだ。見る方?それともやる方?」
彼女は、首を傾げて聞いてきた。
その時に、金髪に近い明るい茶の長い髪が靡いた。太陽と鷲か鷹の絵柄の着いた黒い帽子を被り、ピアス、ネックレスアクセサリーも多くつけてオシャレギャルな見た目だ。
「やる方かな。正直、やってみたいなって思う」
「へぇ!でも、見学してるってことはVTuberコースじゃないんでしょ?」
「うん……、VTuberコースにした方が良かったかな」
「うーん、ここで言うのもなんだけど、あんまりVTuberの勉強とか意味ないと思う」
彼女は小声で苦笑いしながら呟いた。
「いやほんとにここで言うことじゃないね!?」
今まさに、目の前でVTuberの勉強している生徒たちがいるわけだし!
「いやーだって、うち、ここだけの話、現役VTuberだからさ」
「ええっ!?」
「しーっ……!公には言っちゃいけないから!」
「そんなことを見ず知らずの僕に言っていいの?」
「いいよいいよ、見ず知らずじゃ、無くならせるから」
「え?」
彼女はそう言って不敵に笑った。どういう事だ?
「VTuberになる方法、うちが教えてあげる。君もVなろうよ!」
彼女のこの一声で僕のVTuberとしての運命は始まった。
「なんで僕にそこまで?」
「なーんか、うちの直感っていうか、鳥たちが君を絶対にいいVTuberになるって評価してるんだよ。つまり、君のその熱心な目に惚れたってこと!!」
「鳥たち?」
「うん。この帽子と服に描かれてるでしょ?たまにうちに語りかけてくるんだよね」
「へ、へぇ」
「まぁ設定だけど!」
「設定かい!」
ちょっとヤバい人?と思いかけたが、意外と面白い人なのかもしれない。
「うちは
「僕は、早乙女両佑。よろしく」
「これからよろしくね。同業者さん」
彼女は僕に手を差し出し、僕達は握手を交わした。
こうして、僕のVTuberとしての生活が始まりを告げたのだった⎯⎯⎯!
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〈作者あとがき〉
初めましての方は初めまして、いつも読んでくださっている方ありがとうございます。
この作品で、長編は3作品目になります。初のハーレム系ラブコメの投稿ということで、作者自身もワクワクしながら書いていきます。読者の皆様にもワクワクを届けられたらなと思います。
それと、最後に、星の評価やハートをして頂けると私の励みになりますので、今後ともよろしくお願い致します!
また、誤字脱字報告などをして頂けると本当に助かります!
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