可変戦闘機ニンフ~ロボットに変形する戦闘機で敵をやっつけるお話~
ランドリ🐦💨
空の乙女は死の舞踏を踊る
KAC−24ニンフ
第1話 ニンフ01の焦燥【KAC20241】
ニンフ01には三分以内にやらなければならないことがあった。
それは故郷に迫る暴走機械群の撃滅。
青空に溶け込む蒼い戦闘機を限界速度で駆けさせる彼は焦っていた。
□ニンフ01、焦り過ぎよ。僚機が追随できていないわ□
「焦りもするさクーリア。故郷が戦略爆撃で吹き飛ばされる手前だぞ?」
機体の制御AIである相棒の言葉にも耳を貸さず、全速力での航行を続ける。
彼の故郷であるデッドラインコロニーは、採算の合わなくなった廃棄予定コロニー。
故に防衛の必要性が薄いとして彼の所属する共和国軍の戦略AIから見捨てられ、国境を越えて迫る暴走機械群の餌として放置されており、見捨てた訳では無いという理由付けの為の三分という戦闘時間の後、戦略爆撃で暴走機械ごと処分される予定なのだ。
ニンフ01はその三分にかけていた。
□故郷と言っても不採算コロニーよ? あなた一人の方が高価値だわ□
「クーリア、価値だけで物事を……見えた!」
冷血な戦闘AIとは違い人情を知るニンフ01が余計な事を吹き込もうとした矢先、彼は戦略AIの計算だと接敵するはずの無かった暴走機械群を発見した。
荒野を走る暴走機械群は家屋の様な大きさをした犬型ロボットの群れだ。
「ニンフ01.エンゲージ!」
□戦う予定じゃないのに、全くもう……。システム戦闘モードに移行します□
無茶な突撃により予定を狂わされてしまった戦闘AIのクーリエは、ニンフ01の号令により、強制的に戦闘モードに移行する。
戦闘AIだけではなく、その蒼い機体も暴走機械との戦闘に適した急制動をかけるための形状へと変形していく。
極端に細い手足と全身に配置されたスラスターを持つその機体は、対暴走機械の為に開発された共和国軍の最新鋭機であるKAC-24ニンフだ。
特に目立つのは両肩に備えられた巨大な砲。
巡行モードのメインスラスターがそのまま前方にスライドしたこの砲はジェネレーターと直結しており強大な火力を持つ。
ニンフは胸部に変形したウェポンベイから、その腕とはアンバランスな大きさの巨大ライフルを取り出し突撃する!
「開幕一発だっ! 食らえ!」
□肩部エネルギーキャノン起動。ウォードッグ二機を破壊。残り三機です□
天駆ける蒼い機体は肩の巨砲を光り輝かせると、纏まって進んでいる機械犬の群れへ天からの一撃を照射した!
大気を切り裂いて突き進む砲撃は、何の障害も無く大地に突き刺さった。
その一撃により大地ごと抉られた二機は蒸発。残りの三機は警戒するように散開すると、中空のニンフを見つけて背負っているガトリング砲で迎撃してくる。
――残り二分。戦略爆撃機部隊、集結完了。
「時間が無いから、手短に行かせてもらう!」
■リスクを取らずに撃ち下せば、無傷で勝てるのに……■
ニンフ01の拙速な判断に、戦闘モードに移行したクーリアも思わず追加でサブモードを起動して文句を言う。
サブモードで文句を言いつつ、機体の方は素直にガトリングの雨に突撃していくのだが。
しかし、そこはクーリアから廃棄コロニー一基分より価値があると言われた男。
「ハッハー! 楽勝だ!」
■機体の損傷修理はあなたの給料から天引きする事が戦略AIにより決定されたわ■
「嫌な信頼をされたモノだな……」
□対艦ライフル起動。ウォードッグ一機撃破。残り二機です□
スラスターを細かく吹かす事で天に黄金の軌跡を描くガトリングの雨をほぼ無傷ですり抜けると、ぼやきながら巨大ライフルを連打して弾幕の展開の為に動けない機械犬の内、一機をスクラップに変える。
――残り一分三十秒。戦略爆撃機部隊、作戦領域へ移動中。
「仕方ない。引かれちまった分は戦果で補うか」
■作戦から逸脱しなければ、危険を冒す必要も無かったのにね■
ニンフ01は戦略AIからの早すぎる処分にげんなりしつつ、給料の査定を上げる事で帳消しにする事を画策する。
そんな彼の様子にサブモードのクーリアは溜息を吐いた。
一機減った事によって疎らになったガトリング弾幕を無傷ですり抜けたニンフは機械犬の背後に立つと、腰から棒状のパーツを引き抜き突き出す。
「ボーナス狙い、行っとくか」
□敵至近、危険。エネルギーソード起動。ウォードッグ一機撃破。残り一機です□
■やるの? 助かるけれど、危険よ?■
突き出された棒状のパーツから噴き出す光が機械犬を両断した。
――残り一分。戦略爆撃機部隊、作戦領域に到達。
残された機械犬から放たれる水平撃ちのガトリングを地面を滑るように駆ける事で回避したニンフが一気に接近し、その勢いで蹴り倒す。
「よし来た! ボーナス頂きだ!」
□敵至近、危険。グリード起動。ログを接収しています。全ターゲット撃破□
■故郷が云々はどうしたの? まぁ、敵の貴重なログが得られるから良いけど■
蹴り倒された機械犬は周辺の大地を掘り返して藻掻くが、棒状のパーツを放り投げたニンフの抜き手に貫かれると、紫電を発しながら固まった。
――残り三十秒。目標の撃破により戦略爆撃機部隊撤退。
「ふーん。こんなのでも元は飼い犬型ロボットのAIだったのか」
■ゴミデータなんて閲覧してどうしたの?■
「いや、俺達と敵対している連中の事を多少知りたくてな」
■捨てられた者たちの帝国ね。こんな名を名乗るのはどうかと思う■
「おっ、戦闘AI様のご意見を拝聴しようか」
■私達の価値は成したことで決まるの。誰が所有しているかなんて、関係ないわ■
――あとがき――
先に目標を全滅させることにより、戦略爆撃の予定をキャンセルさせたニンフ01。
しかし、敵のログには驚愕の作戦が残っていた……!
ニンフ02の話に続く。……予定!
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